【コラム】韓国の若者たちを見誤った北朝鮮(下)

延坪島砲撃事件後、海兵隊への志願者が急増

 たとえ落ちても、何度でも志願するという若者に対し、ある海兵隊の先輩はこう答えた。

 「今年、海兵隊を除隊した予備役です。たぶん、合格するでしょう。北朝鮮が主敵というのは合っています。かなり高い点が付いたでしょう。合格する可能性は90%だと思います」(ID:jamellas)

 海兵隊だけではない。今年春に起こった哨戒艦「天安」沈没事件の直後、海軍は志願者が減るのではないかと懸念したが、杞憂(きゆう)に終わった。海軍は今も、競争率が2倍以上に達する狭き門だ。捜索活動中に殉職したハン・ジュホ准尉が属していた海軍特殊旅団(UDT)や、海難救助隊(SSU)の競争率は、3-4倍となっている。奇妙なことに、韓国の若者たちの間では、危険な任務を伴う部隊ほど人気が高まる傾向にある。

 このことだけをもって、若者たちの愛国心が復活した、と断定するのはまだ早いかもしれない。「どうせ軍隊へ行かなければいけないのだから、ハードな部隊へ行って、かっこよく見られたい」という、現代っ子特有の意識が背景にあるのかもしれない。しかし、理由はともあれ、大事なことが一つある。北朝鮮が繰り返してきた軍事的な脅しに、韓国の若者たちは決して負けていないということだ。

 われわれは、若者たちの国家観や安全保障に対する意識の崩壊を懸念してきた。「主敵はどの国か」ということさえも、きちんと認識できない若者たちが、果たして祖国のために銃を手にすることができるのか、といぶかしんできた。しかし、若者たちをそんな人間に育てたのは、ほかでもなく、われわれの世代だ。過去十数年間、学校で「国家」について教えず、社会が「安全保障」を軽視してきた結果であり、自業自得だ。

 逆説的に考えれば、若者たちの間に残っていた安全保障に関する本能を、北朝鮮が呼び覚ましたともいえる。延坪島砲撃事件や「天安」沈没事件で犠牲になったのは、20代前半の若者たちだった。同年代の人たちが死んでいくのを目の当たりにして、若者たちは本当の敵が何なのか、実感したというわけだ。こうした現象は、海兵隊への志願者の増加だけで終わらないだろう。金正日政権は、韓国の若者たちを見誤ったのだ。

朴正薫(パク・チョンフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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