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April 13, 2009

(日文)竜†恋[Dra+KoI] ぎんいろアクマときんいろオバケ Track 10




[Track 10 DRAGON’S TAIL TALE/POORSTORY’S GOLD]


祝福されて、俺は生まれた。

菩提樹の葉の痣を持って生まれし、神子。
王国千年の繁栄を約束する、未来の英雄。
それが、俺だった。

祝福の中、生まれたばかりの俺は、
目を焼かれ、
手足を切り落とされ、
下水に流された。

国中の、呪いのような愛に包まれて、
ダルマの赤子が、王廷の川を流れてゆく。


「つまり。英雄譚ってわけだ。
何事にもお約束ってもんがある。
英雄は、何かの困難を負って生まれる。
たとえば呪い。
たとえば不吉な予言。
たとえば……生まれながら怪我を持つ、とかな。
故に、赤子が忌まれ、捨てられる。
捨てられた子は、卑しい身分の女や獣に拾われて育てられる」


俺を拾ったのは、奴隷の娘だった。
そういうことになっていった。
自分では動くことすらままならない俺を、彼女は甲斐甲斐しく育てってくれた。
そのように命じられていたから。


「やがて英雄は成長し、旅に出る。
困難な試練を乗り越え、偉業を成し遂げる。
そのための魔法的な手段を、支援者から与えられる。
たとえば……老いた魔法使いから。
たとえば……天上に御座す神々から。
たとえば……湖に住まう妖精から。
聖剣や寶具、加護や祝福、或いは……超常的な能力。
その力を用いて、英雄は試練に挑む」


出来損ないの俺に与えられたのは、
全てを見通す、水晶の瞳。
千里を駆ける、銀の足。
魔を退ける、銀の腕。
「その力を持って、黄昏の谷の竜を討て」と、魔法使いはそう言った。

なぜ?どうして?

夢(ロマン)がそう求めているから。


「試練を乗り越え、英雄は栄光を手に入れる。
そしてついには、自ら高貴な血筋を知り、故郷に帰還する。
そして王となり、末永く王国を統治するのだ」


黄昏の谷の、黄金の竜を討ち、美しい姫を救い出す。
そして俺は、彼女と結ばれ、王国に千年の栄華をもたらす。
そのはずだった。
そのはずだった!!


「正直な話をしようか。
実は、すごしだけワクワクしていた。
いきなりハードコアな血と虐待からスタートした我が人生。
だけれども、夢(ロマン)がそれを求めるならば、
物語の主役として、舞台に立てるならば、
それは喜びだった。
そうだ……ついに全てが、報われる瞬間が来たのだ!」


黄昏の谷の、朽ちた城で待っていたのは、


「夕日を浴びて、黄金色にきらめく……」


硝子の瞳は何も映さず、意識を持たず……


「それは……」


竜を埋まれただけの……


「あああああ…….!!」


「あああああああ~!!」

錆び付いた、真鍮の大きいものが、
転がっていた。

「世界よ。俺を産み落とした忌まわしい故郷よ。
俺は……俺の目で見る景色を奪われた。
俺は……俺の足で立つ大地を奪われた!
俺は……俺の腕で抱く、温もりを奪われた!!
それなのに……おまえは……お前たちは、
俺が……俺の心に抱く、たった一つの、ささやかな誇りさえ、
根こそぎ奪い去ろうというのか!?
俺に与えるものなど、何一つ残ってないくせに……
この世界には、たった一片の詩さえ残されていないのに……
それでもなお、こんな苦境の物語をなぞってまで、
俺たちは、夢(ロマン)を求めなければならないのか!?
嗚呼、虚ろな世界、貧しい物語!真鍮を黄金と偽り、鴉片の毒を夢(ロマン)と嘯き。こんなにも、こんなにもむなしい時代に辿り着いてしまった。
嗚呼、地に蔓延る愚かな民よ!こんなにも虚ろな世界の果てで、こんなにも虚しい時代の袋小路で、それでもなお、夢(ロマン)が尽きぬというのなら、
よかろう。今より余は、皆の敵だ!
如何なる魔物よりも残忍で、如何なる竜よりも凶暴な、三千世界全ての悪!
余は、白銀の魔人、人に仇なす月明かりの魔王だ!
余が求めるのはたった一つ!
もがき、苦しめ!
真実の悪を滅ぼすための英雄譚を、
死に物狂いで求めに来い!!
まだ見ぬ……余の英雄よ!
この魔王に……哀れな道化に……
世界に生まれ落ちた意味を!
どうか……どうか……
与えておくれ!!


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