(日文)竜†恋[Dra+KoI] ぎんいろアクマときんいろオバケ Track 09
[Track 09 DRAGON’S TAIL TALE/BRYNHIDR]
ゲーム主人公の語り。
「英雄譚に例えるのかい?うん……まあ、やってみようか。
えっと……昔々どこぞの英雄が、ドラゴンの血浴びて、不死身になったわけよね。
なんつか、厨スベックだよね。チート野郎だよね。
まあ……ただそいつはさ、ドジっ子ってさ。背中に葉っぱが張り付いてるから、そこだけが弱点になるわけ。
って、それはともかく。われらが英雄様の厨二病的大活躍は、止まることを知らず。ついには炎に包まれた岩山から、お姫様を救い出して、目覚めのキスでハッピーエンド。
ってなどころで……本当に終わっとけば綺麗だったんけど、この後英雄様が、別の女に走っちゃったんって、お姫様がすっかりヤンデレって、空鍋がNICE BOATって、背中をぐっさり刺されて、『私たちこれでずっと一緒ね』……みたいな。
いや、女って怖いよね?
まあ、そんなニーベルンゲンの痴話喧嘩をなぞったってわけではないんだけどさ……
彼もまた、彼にとってのブリュンヒルデを……裏切ってしまったんだ」
---
「昔々黄昏の谷の古いお城に、黄金の竜が棲んでいました。
とても凶暴で残忍なその竜は、美しいお姫様を生贄に要求しました。
人々は嘆き、悲しみました。
しかしあるとき、一人の英雄がお姫様を救うため、竜に戦いを挑みました。
英雄は……」
---
「英雄は……逃げたのよ。」
薄る意識の中で、彼女の語りを聞く。
「竜を殺すための、魔法の瞳。
竜を殺すための、魔法の足。
竜を殺すための、魔法の腕……」
それは、御伽噺。
「だけど、それらの魔法は使われることもなく……」
どこにも辿り着かなかった、夢(ロマン)のお話。
「英雄は逃げたのよ。
黄金の竜と一緒に逃げたのよ」
白銀きらめく、怨み唄。
「悪いドラゴンと、愛しい英雄と、
その両方に裏切られて、
物語での配役を奪われたお姫様は、どうすればいいの?
……どうすればいいと思う?」
子供が怯える、わらべ歌。
「だから貴方は……私に、殺されるのよ。英雄」
しゃがみ込み、喉元に両の手を絡める。
竜の鱗に触れて、力を込める。
「物語が……ヒーローと悪役を失ったとなら、
誰かが、代演を務めないといけないでしょう?」
ゆっくりと、ゆっくりと、縊り殺す。
「今や……貴方が世界の敵で、
そして、私が……救世の英雄」
暗くなってゆく。視界の隅に。
「私が……夢(ロマン)を、完成させるのよ」
暴れる、機械仕掛けの竜を見た。
黄金色の竜。
(爆発)
「ふふ…..どうした?どうした?」
黄金色の、黄金。
「えい~そこなんだと!?」
偽りの黄金。
貧者の黄金。
それは、真鍮の……
ああ……君は知っているだろうか。
裏切りの英雄と、黄金の竜に秘められた……
もうひとつの夢(ロマン)を。
それはとても貧しくて、空しい物語。
---