2010年12月12日15時48分
トヨタ自動車が昨年末、系列メーカーに部品価格を3割以上引き下げるよう要請したことを受け、愛知県豊田市が「市内の中小企業への影響を継続的に調べる」と表明したにもかかわらず、実際には調査を全く実施してこなかったことがわかった。市は「担当職員が『下請け企業には答えにくい調査では』と想像して、実施をためらってしまった」と説明している。
豊田市は2008年秋の世界同時不況で、市税収入の多くを頼るトヨタの業績が悪化したことなどを受け、市内の景気動向を把握するための「景況調査」を定期的に実施してきた。中小製造業者への調査では、担当の産業労政課が、約200社にアンケート用紙を配布し、「業績見通し」や「雇用者数の変化」などの項目について調べてきた。
一方、トヨタは昨年12月、3年間で部品価格を平均3割下げる目標を掲げ、系列メーカーに要請。同市はこの影響についても、いったんは景況調査を活用して調べると決めた。今年2月の市議会本会議では、当時の産業部長が「新たに調査項目に追加し、中小企業への影響を把握していく」と明言していた。
ところが、今年6月と8月、11月に発表した景況調査には、部品価格引き下げの影響についての記述が一切なかった。
朝日新聞の取材に対し、同課は、「実際には、調査を実施してこなかった」と認め、「担当職員が設問を検討するなかで、『下請け企業は親会社との関係悪化を気にかけ、実態に即した回答をしないのではないか』と想像を膨らませ、調査項目を追加できなかった」と説明した。また、今年度の新任の課長は、こうした検討内容について報告を受けておらず、調査が実施されないままになっていることに気付かなかったという。
同市産業部の畔柳寿文調整監は、「市議会という公の場所で約束したことを実施してこなかったことは非常に遺憾だ。来年1月に予定している次回の景況調査から実施したい」と話している。