風の「夢から覚めた夢」

P14-34
「旧友」はなぜ石原都知事を告訴したのか？
　２００２年５月、中山正暉・衆議院議員は石原慎太郎・東京都知事を相手取り、大手新聞社への謝罪広告掲載および損害賠償１千万円の支払いを求める民事訴訟を起こした。同年４月８日、石原氏が執筆している『産経新聞』の連載コラム「日本よ」の中で、中山氏に触れた部分が名誉毀損に当たるというのが告訴の理由だ。
　中山代議士といえば、郵政大臣、建設大臣を歴任した自民党江藤・亀井派の重鎮である。その中山氏が、国会議員としてデビューする前からの友人だったという石原氏を、なにゆえ告訴するまでに至ったのか？
　・・・・・・・・・
−『産経新聞』の記事が出る前に、何か揉め事でもあったのでしょうか？

　｢まさか。私のところと慎太郎のところは、女房同士も親しいんです。だからこそ、なんで私が慎太郎からケチをつけられるのか、よくわらない。とりあえず慎太郎の意図を確かめるため、彼の自宅に電話を入れました。ところが、慎太郎の奥方の典子さんが出るばかりで、本人は電話に出ようとしない。
　秘書の兵藤氏（都知事特別秘書）にもさんざん電話したけど、まったく埒があかない。彼が『検査入院している』と言うから、『では、そこに会いにいく』と言ってやったら、最後には『どこの病院かわかりません』と。東京都知事ともあろうものが、行方がわからないということはないでしょう。
　ところが、調べてみると、休暇で伊豆の伊東温泉におったんですね。だから先日、兵藤に会ったときに、こんなに騒ぎを大きくした責任は君にあると言ってやったんです。私が会わせてくれと言ったときに会わせてくれたら、こんなことにはならなかったと。何も答えませんでしたがね。案の定、今度の裁判資料でも兵藤の証言はわずか一行。『石原慎太郎・東京都知事の書いた記事は正しい』と書いてあるだけ。弁護士さんが笑ってましたよ。
　ともかく、慎太郎のその不実さは昔から変わっていない。しかたがないから東京都庁に押しかけようかとなと思ったけれどやめた。あそこは向こうの舞台だからね。結局、参議院国会等移転特別委員会の参考人として国会に来ることがわかったから、会議室の前で待ち伏せしたんです。
　そして、終わって出てきた慎太郎にこう言ってやった。
　『いい加減なことを書くな！　＜この政治家の体たらく＞とは、誰に向かって言ってるんだ！　アンタも４、５年前によその女に産ませた倅を認知したらしいな。俺は女房との間にしか子どもがいないけど、よそで子どもを産ませたヤツから ＜この政治家の体たらく＞ なんて言われる筋合いはない』と。慎太郎は顔面蒼白になっちゃったね」

−「倅を産ませたよその女」というのは、『ＦＲＩＤＡＹ』（講談社）がスクープした、元銀座ホステスのＭ子さんのことですか？

　「そう。だけど、慎太郎の不実さはそんなもんじゃない」

−というと？

　「『家庭画報』（世界文化社）の２００２年４月号を読むと、慎太郎が作家の瀬戸内寂聴さんにこんなことを話している。
　『昔々の話ですが、私がまだ二十代に熱愛したある人が、五十代に起こした車の事故のせいでまだまだ若いのにアルツハイマーにかかり、長い闘病の末に亡くなりました。一度だけお見舞いに行って、その無惨な変わり様にショックを受け、その後恐くて行けなくなった。そんな心理が綾をなしてか、見舞った後、彼女の夢をよく見ました』
　嘘をつくなと言いたい。実は、この女性は『劇団四季』始まって以来の美人女優といわれた中町由子さんなんです。亡くなられた方なので、悪くは言いたくありませんが、彼女は三十年間慎太郎に囲われていた・・・・・・愛人だったんですよ。二十代に愛した女性なんかではない。もっと深い関係があったわけです。にもかかわらず、無惨な姿になってしまったからといって、恐くて見舞いにも行かないという。作家だからって、こんなふうに書いていいわけないでしょう。彼の愛情のなさをハッキリ示しているじゃないですか。・・・・・・・」