【ゆうゆうLife】基礎年金 75歳から? 80歳から? (3/4ページ)

2010.12.10 09:06

現行制度に組み込まれた給付抑制は実施されず、特別会計の取り崩しも検討される。制度の行方が危ぶまれる

現行制度に組み込まれた給付抑制は実施されず、特別会計の取り崩しも検討される。制度の行方が危ぶまれる【拡大】

 大胆な案に会場には笑いが広がり、井堀教授も「現実味がない。一つの思考実験」と笑う。だが、背景には、将来世代への過重な負担が放置されている強い不満がある。

 「高齢世代は数も多く、政治的圧力も強い。法律があっても、今後も年金抑制(マクロ経済スライド)は難しいだろう。今のような『若い世代は年金をもらえるけれど、払うより少ない』では、若者はお年寄りを大事にしようという気持ちも湧かない。制度を早く改正すべきだ」

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 ■海外でも年齢引き上げ予定

 制度に漂う暗雲は、年金抑制が実現されないだけではない。来年度予算では、基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を下げる案まで取り沙汰された。

 国庫負担割合は、6年前の制度改正で3分の1から2分の1へ引き上げが決まった。「現役世代の年金保険料を上げ続けるのは限界がある」とされたためだ。

 必要財源は、消費税を1%上げてやっと確保できる約2・5兆円。歴代政権は消費税を上げる腹づもりだったが先送りに。平成21、22年度は“埋蔵金”でしのぎ、2分の1を実現したが、それも今や枯渇した。財源がないまま、来年度予算編成で浮上したのは国庫負担割合を再び下げるという奇策。さらに、タコが足を食うように、年金特別会計の積立金を充てる案まで出た。仮に来年をしのいでも、再来年度も財源のあてはない。年金制度の持続可能性は怪しくなるばかりだ。

 海外では、米国、ドイツ、デンマーク、英国などで年金開始時期の67歳や68歳への引き上げが予定される。基礎年金の75歳支給案、80歳支給案は現実離れして見えるが、専門家の懸念は深い。

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