世界最大のロケット打ち上げ企業、欧アリアンスペース社のジャンイブ・ルガル会長がこのほど来日し、日本との関係強化などについて抱負を語った。
同社は80年の設立以来、放送衛星など287基を打ち上げた。現在運用中の世界の商業衛星でのシェアは約50%、日本では75%にのぼる。日本政府も衛星打ち上げ市場に参入しようと今年7月、鹿児島県種子島の射場について、打ち上げ期間の制限撤廃を決めた。
ルガル会長は「(日本国内のロケット打ち上げを担う)三菱重工業とは万一の場合に打ち上げを代行しあう協力関係にある。この代替サービスは新たなビジネスになる。日欧とも政府の宇宙予算が厳しいので、効率や安全性の確保にもつながる」と、制限撤廃は共存共栄になると歓迎した。
同社は来年4月、ロシア製の中型ロケット「ソユーズ」を南米ギアナの発射場から打ち上げるほか、欧州宇宙機関が開発した新しい小型ロケット「ベガ」を来年後半に打ち上げて顧客層を広げる計画だ。採算性の問題が指摘される主力ロケットのアリアン5については「打ち上げ費用は非公開だが、衛星1基当たり最低1億ドルを顧客に求めている。発射場整備への欧州当局の支援もあるが、採算性はトントンだ」と説明。一方で、米ベンチャーが打ち上げに参入の動きを示していることに「新しい動きは楽しみ。ただ、顧客は実績のある企業を選ぶ。かつての我々と同様、時間をかけて実績を積むことになるだろう」と話した。【山田大輔】
毎日新聞 2010年12月7日 東京朝刊