2010年12月10日23時32分
宇宙空間で帆を広げたイカロス。6月、本体から分離されたカメラが撮影した=宇宙機構提供
光の力で飛ぶ宇宙帆船「イカロス」が、金星の近くを無事に通過し、予定していた実験を無事に終えた。宇宙航空研究開発機構の実験チームが10日、ブログで発表した。サブチームリーダーの津田雄一さんは「肩の荷が下りました」と話した。
イカロスは5月に打ち上げられた。14メートル四方の薄い帆を宇宙空間で広げ、光の粒がぶつかって跳ね返るときに受けるわずかな力を利用して飛ぶ。加速できることの実証や、薄い太陽電池での発電など、予定していたミッションにすべて成功した。8日午後4時39分に金星上空約7万4千キロを通過、その後で調べたところ、機体に故障はなかったという。
地球から遠く離れたため、すでに電波はとぎれとぎれ。姿勢制御に使う燃料は残り半分ほどという。津田さんは「今までは安全に運用していたが、これからは帆がかなり変形するような、思い切った姿勢制御をしたい」。
通信ができなくなった後のイカロスは、「人工惑星」として太陽のまわりを回り続ける運命だ。
イカロスは、金星の周回軌道入りに失敗した探査機「あかつき」を打ち上げたロケットに相乗りして宇宙に行った。津田さんは、あかつきについて「一緒にやっている仲間なので、本当に悔しい。6年後の軌道再投入チャレンジを応援したい」と話した。(小宮山亮磨)