京都議定書:EUが延長容認へ

2010年10月13日 2時30分 更新:10月13日 9時14分

 【ブリュッセル福島良典】13年以降の地球温暖化対策の枠組み(ポスト京都議定書)について、欧州連合(EU、加盟27カ国)が、先進国にのみ温室効果ガス排出量の削減義務を課した「京都議定書」の延長を条件付きで容認する見通しとなった。先進国と途上国の対立で京都議定書に代わる「新議定書」のめどが立たないまま京都議定書が12年末に期限切れを迎え、削減義務のない空白期間が生じる恐れがあるためだ。

 11月末からメキシコ・カンクンで開かれる国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)を控え、途上国を中心に延長を求める声が強まっている。EUの容認で、延長反対の日本は苦しい立場に追い込まれそうだ。

 容認方針は14日にルクセンブルクで開かれるEU環境相会議で確認される予定だ。京都議定書で定められた排出削減期間は12年末で期限が切れるが、環境相会議の採択文書草案は13年以降の延長について「検討する用意」を表明し、条件に(1)京都議定書で削減義務のない米国や中国など主要経済国による削減の取り組み(2)削減を計算する仕組みの改善--などを挙げている。

 米国は京都議定書から離脱、主要排出国の中国、インドは削減義務を負っていない。EUは日本などと同様、京都議定書に代わり、米中や途上国も参加する単一の新議定書を追求してきた。

 この姿勢は昨年末のCOP15で、途上国から「先進国に削減義務を課した京都議定書を葬ろうとしている」と批判された。EUの延長容認はこうした批判を封じる狙いがある。

 また、EUは国際交渉の難航で13年以降の枠組み作りの見通しが立っていない現状に危機感を募らせている。中国・天津で今月上旬に開かれたCOP16準備の作業部会も大きな進展がないまま閉幕した。法的拘束力のある枠組み作りは来年末のCOP17まで先送りされるのは確実な情勢で、EUは削減義務の縛りがない空白期間が生まれる事態を懸念している。

 ◇途上国と対立解けず

 温暖化対策の国際交渉には南北対立の構図がある。途上国は「温暖化を招いた先進国の責任」を批判、先進国にだけ削減義務を課す京都議定書の延長を求める。一方、先進国は、中印を含む途上国にも削減を求める包括的な新しい枠組みを望む。昨年末のCOP15は、対立が解けず暗礁に乗り上げた。

 EUは今回、京都議定書延長容認に転じたが「京都に代わる単一の新議定書が望ましい」との理想論の旗は降ろしていない。温暖化対策で世界を主導する自負があるためだ。

 だが、現状では交渉の順序が(1)まず京都議定書延長に同意する(2)米中印などを含む包括的な新議定書を作る--となってもやむを得ない、との現実路線にかじを切りつつある。

 新議定書ができないまま京都議定書が失効し、温暖化対策の「世界無政府状態」が生まれるのはEUにとって最悪のシナリオだ。排出量取引の世界市場を形成し、温暖化対策を経済活性化につなげたいEUの戦略が奏功しなくなるからだ。

 EUは京都議定書延長の条件に「(米中など)主要経済国の削減の取り組み」を挙げた。しかし、中間選挙を控える米国では温暖化対策法案の成立が難航中だ。中国は「一部の先進国が途上国に同じ義務を押しつけようとしている」と主張する。現状ではEUの条件が満たされる環境はなく難航は必至だ。

 京都議定書延長に反対する日本はEUの方針転換で厳しい対応を迫られる。途上国がEUの容認をてこに日本に揺さぶりをかける可能性もある。省エネに努力した結果、温室効果ガス削減の余力が少ない日本は「20年までに90年比で25%削減」の高い目標を掲げている。京都議定書が延長されれば削減義務を負わない中印などとの国際競争にさらされる。

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