北朝鮮砲撃:ためらいはむしろ戦闘拡大を招く(上)
「第一線」で防ぐべき
軍事専門家の多くが、先月23日に北朝鮮が延坪島へ砲撃を行った際、出撃した最新鋭F15K戦闘機の回航を残念がった。北朝鮮が韓国側の対応をテストし、じわじわ挑発のレベルを高めていくという悪循環を断ち切る機会を逃したというわけだ。盧泰愚(ノ・テウ)政権で大統領府(青瓦台)国防秘書官、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で国防補佐官を務めたキム・ヒソン安全保障問題研究所所長(予備役陸軍中将)は、「当時、北朝鮮のミグ23戦闘機が飛来してきたが、F15Kにかなう相手ではなかった。もし空中戦が起こっていれば、北朝鮮が完敗し、“挑発には代価が伴う”という確実なメッセージを伝えることができただろう」と語った。またキム所長は、「全面戦になったらどうするのかと言う人がいるが、全面戦は、韓国が懸念している以上に北朝鮮も恐れている」と語った。
韓国軍が戦闘機による爆撃を放棄した表向きの理由は、「対等な武器」で対応しなければならないという国連軍司令部の交戦規則のためだが、その裏には、戦闘の拡大を懸念した韓国軍最高首脳部のためらいがあった。しかし専門家らは、歴史の教訓を挙げ、戦闘の拡大をためらっていては、逆に戦闘の拡大を招くことになると強調した。第2次大戦発生直前、戦争だけは避けようと、ヒトラーとの対話に臨んだイギリス首相チェンバレンの失敗談が、その代表例だ。ヒトラーがチェコスロバキアを占領しようとした際、チェンバレン首相は、チェコスロバキアの一部だったズデーテン地方をドイツに与える代価として、「平和的解決」を保障する内容を盛り込んだミュンヘン協定を結んだ。その後、イギリスに帰国したチェンバレン首相は、この協定を振りかざし、「わたしたちの世代ではもはや戦争はない」と叫んだが、翌年3月にはヒトラーはチェコスロバキア全土を占領し、同年9月にはポーランドに侵攻、第2次大戦がぼっ発した。小さな対決を恐れ、より大きな対決を引き起こしたわけだ。
国策研究機関のある関係者は、匿名で「北朝鮮は一段階ずつ挑発の強度を高めているが、その度に“戦闘が拡大したらどうするか”と心配していては、北朝鮮にやられ続けるしかない。もし北朝鮮が、ソウルに長射程砲を1、2発撃ち込み、誤って発射したと主張すればどうするのか」と語った。