分断の現実を直視せよ(上)
戦線防衛と平和
2007年5月25日、蔚山市にある現代重工業の造船所では、韓国海軍初となるイージス艦「世宗大王」(7600トン)の進水式が行われた。米国、日本、スペイン、ノルウェーに続き、韓国は世界で5番目にイージス艦の保有国となった。建造費1兆ウォン(約730億円)を投じた「世宗大王」は、スペインやノルウェーのイージス艦(5100-5800トン)よりも大型で、日米にも匹敵する世界でもトップ級の艦船だ。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代には、「世宗大王」以外にも「大洋海軍」にふさわしい艦船が続々と建造された。2隻目のイージス艦「栗谷李珥(ユルゴク・イ・イ)」も06年に建造が開始され、08年11月に進水した。これに先立ち、アジア最大規模の揚陸艦「独島」が05年7月14日に進水している。
盧武鉉前大統領は、07年3月に海軍士官学校の卒業・任官式で、「参与政府(盧武鉉政権)になってから、駆逐艦『文武大王』、揚陸艦『独島』『孫元一(ソン・ウォンイル)』級潜水艦など7隻が進水し、今春にはイージス駆逐艦(世宗大王)もその威容を現すことになる。韓国海軍は韓半島(朝鮮半島)はもちろん、世界平和に寄与することができる大洋海軍へと発展することになる」と述べた。
大型艦船は「大洋海軍」という旗印の下、盧武鉉政権期に集中的に進水したが、計画は金泳三(キム・ヨンサム)政権下の1990年代半ばに作成されたものだった。96年に日本と独島(日本名・竹島)の領有権をめぐる対立が起きると、海軍は同年から2012年までに1万トン級軽空母、大型揚陸艦、3000トン級重潜水艦、7000トン級イージス駆逐艦などを建造する総額12兆ウォン(約8750億円)の大規模戦力増強計画を立て、金泳三大統領に提出した。そうした決定には、金泳三政権以降のグローバル化志向に加え、日本が独島の領有権を主張し、日・中が海軍力を増強したことから、韓国海軍がこれ以上、「スパイ船を摘発するための沿岸海軍」にとどまってはいられないとする政権・軍の判断が影響を与えたとされる。
このように、歴代の政権の政策に左右された「大洋海軍」建設路線は、今年3月に哨戒艦「天安」爆沈事件が起きて以降、潜水艦など北朝鮮の非対称戦力に対する軍の対策が不十分だったことが表面化し、論議の対象となっている。
一部専門家は、韓国軍が「海へ、世界へ」「空へ、宇宙へ」といったキャッチフレーズと高価で世界最高レベルの兵器にばかり執着し、北朝鮮への対応体制に欠点をさらけだしたと指摘する。金泰栄(キム・テヨン)国防部長官も天安爆沈事件以降、指揮官会議で「重要なことは言葉や表面的な体裁ではなく、行動と実践だ。痛切な自省と覚悟が速やかに現実へとつながらなければならない」と強調した。
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