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AMOKの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010-12-09 日本からNature, Science, Cellの論文が出にくい理由 White編 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

昨日のゲームの話とは別の角度からサイエンスにおけるゲームについて書いてみる。

アメリカと日本におけるPIになること、およびPIで居続けることを一つのゲームと考えてそのルールについて書いてみよう。

アメリカの場合、PIは日本の助教も含まれる

必要な業績はNature姉妹紙クラス1報からNature, Science, Cellを1報と学会誌1報程度

最初はテニュアトラックがあり、一定の業績を挙げ続けないとクビ

その後も准教授、教授と地位は上がっていくが、業績が出ないとクビにはならなくとも何らかの降格や左遷に近いことになることがあり得る

この場合の業績とはNature姉妹紙程度を指す

年齢による退職はない

日本の場合、

教授

Nature, Science, Cellの1st Authorshipが2報(確実にPIになれそうな業績)

一度なってしまうと、犯罪でもしない限りクビにはならない(最近は業績がなさ過ぎてクビなる研究施設もあるが、まだ稀)

63歳-65歳になったら退職(特任教授や学部長、学長で少し伸びることもあるが、研究は以前ほどできない)

准教授

准教授になると、必要な業績はNature姉妹紙クラス1報からNature, Science, Cellを1報と学会誌1報程度が必要

教授が退官してしまうと少しピンチ

次の教授に疎まれながら、何とかなることもある

助教

業績は助教だとほとんど必要ない。コネで採用されることが多いのでその教授が居続けて嫌われていなければ、いつまでも働ける。

教授が退官してしまうとかなりピンチ

ちょっと長々と書いてしまいましたが、要点は一つ。

日本で教授になるためには二つ経路があって、

海外の有名どころでNature, Science, Cellを出す。

日本の大御所のところでNature, Science, Cellを出す(結構大変)。

これをゲームとして見た場合、アメリカだとやはり姉妹紙程度を出し続けなければいけない仕組みになっている。

日本は最初に出しさえすれば、あとは追加ポイントに過ぎず、今の地位を維持することには過剰なポイントになっている。これが、日本人研究者が留学する理由のほとんどだろう。

これって、アメリカの大学と、日本の大学の仕組みの違いにそっくり。

入りさえすれば、就職の時のシグナリングとして機能する日本の大学、

入ってから相当努力しないと退学になるし、良い職を得られないアメリカの大学

だから、アメリカ式にすれば良いんだという考え方もあるけれど、そもそも就職先がアメリカ式、つまり、解雇の自由化が実行されていないし、教育に市場効果もあまり期待出来ないので、無駄な努力となって、自殺者が増えるだけだろう。やるとしたら、インターン制度くらいだろうか。

(Black編につづく)