金正日体制に亀裂? 内部統制力を喪失か(下)
韓米日外交当局「北朝鮮が軌道から外れた可能性あり」
韓国政府当局者は、「今年初めに対話の雰囲気を高めようとしたが、天安沈没事件が起きた。その後も再び対話を進めようとしたが、今度は延坪島砲撃が起こった」「北朝鮮から発せられるシグナルが過去とは異なり、一貫性がない」と述べた。
■金総書記一人体制に動揺か
考えられる可能性は二つだ。一つは、北朝鮮が自らの核開発能力を基に、挑発の度合いを高めたとしても、韓国は戦線拡大を恐れて報復せず、交渉に応じてくるという判断を下した可能性だ。
もう一つは、金総書記一人体制に亀裂が入った可能性だ。北朝鮮の支配体制に変化が起きているという見方は、2008年8月に金総書記が脳卒中で倒れてから、徐々に表面化してきた。それまで北朝鮮の権力は、徹底して金総書記一人に集中していた。「後継者」どころか、「ナンバー2」という話さえもでなかったほどだ。金総書記は04年、妹・金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫、張成沢(チャン・ソンテク)氏を中心としたグループが形成されつつあるといううわさが広まると、そのグループを一気に粛清した。当時も「北朝鮮軍部には強硬派が存在し、金総書記は彼らの顔色をうかがっている」という見方があったが、これについて治安政策研究所のユ・ドンリョル研究員は、「金総書記がすべての権力を掌握し、決定を下すという北朝鮮体制について理解が浅いために出てくる意見だ」と評している。
しかし「金総書記の病変→金正恩(キム・ジョンウン)氏の登場」というプロセスを経たことで、「北朝鮮は以前とは確かに変った」という見方も力を得ている。北朝鮮の事情に詳しいある消息筋は、「金総書記が倒れたとき、張成沢・金敬姫・金玉(キム・オク)各氏ら北朝鮮のロイヤルファミリーが、病に倒れた金総書記の周囲を守りながら“代理統治”を行っているという情報がある」「金総書記が以前のようにあらゆる決定を下すことが難しい状況にあるため、異常な兆候が表面化しつつある」などと指摘する。金正恩氏に急いで権力を継承させる過程で、きしみが生じているという見方だ。
元北朝鮮政府高官の脱北者は、「金総書記は1970年代初めごろ後継者になることが決まり、それから10年以上、“秘密パーティー”などで自分の勢力を拡大してきたが、金正恩氏はそれとは状況が異なる」と述べた。
鄭佑相(チョン・ウサン)記者
アン・ヨンヒョン記者