無数のカメラのフラッシュにも、顔を下に向けることはなかった。ワンボックス車に乗せられ、ぶ然とした表情で口を軽く開け、時折白い歯をのぞかせる。午後9時10分ごろ、警視庁本部から目黒署に移送されたリオン容疑者は、26歳にしてはやや子供っぽい表情。中学時代は将来を嘱望されたサッカー少年だった。
東京・杉並区生まれ。 米国籍を持つ中南米系の父と日本人の母を持つハーフで、子供の頃から体が大きく、目立っていたという。中学から高校1年にかけて、Jリーグの下部組織チーム「ヴェルディジュニアユース」に所属。50メートル5秒台という俊足を生かしてFWとして活躍し、1998年には15歳以下の東京都選抜選手にも選ばれ、「東京−ソウル親善サッカー定期戦」ではゴールを決めて注目を集めた。
だが、同級生となじめず、中学卒業後に都内の暴走族のメンバーに声を掛けられてチーム入り。都立高校夜間部に入学後も、リーダー格として地元のコンビニエンスストアなどで仲間と夜な夜なたむろしていた。
当時を知る近隣住民は「気に入らないとすぐに手を出したり、近寄れない雰囲気だった」と話した。周囲とトラブルを起こすこともたびたびで、サッカーからは次第に心が離れていき、暴走族チームのリーダー格として多くの“武勇伝”を残した。高校も中退し、サッカーチームも辞めた。
一方で、義理堅い性格で正義感が強かったとの証言も。地元の理髪店店主は「礼儀正しい男。数年ぶりに路上で会うと、『久しぶりにお願いします』と店にやってきた。今回の事件では(リオン容疑者が暴行する前に)納得いかないことがあったのかもしれない」と擁護した。現在は2歳年上の妻と1歳の双子を持つパパとして都内でクラブ店員として働いている。
事件が起きた六本木、西麻布周辺はリオン容疑者らの“根城”。歌舞伎界のプリンスに全治2カ月の重傷を負わせた真相の解明は、今後の取り調べで明らかになる。
★午後8時半 フジ第一報
逮捕状が出されていたリオン容疑者の身柄を警視庁が確保した第一報を伝えたのはフジテレビ。バラエティー番組「金曜日のキセキ」の放送中だった午後8時30分に、テロップで速報を流し、逮捕は同50分に報じた。同局の後に、日本テレビ、NHKと続いた。