政府は砲撃戦の発生直後に、官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置。その対応こそ早かったが、肝心の首相の動きは相変わらず鈍かった。
菅直人首相(64)が官邸に入ったのは、砲撃開始の午後2時半から2時間以上も経過した午後5時前。仙谷由人官房長官(64)らも相次いで官邸に駆けつけた。
菅首相は「北朝鮮が韓国の島に砲撃を加え、韓国も応戦したという報道があり、私にも3時半ごろに秘書官を通して連絡がありました」。官邸で報道陣に、第一報が報道だったことを恥ずかし気もなく明らかにした。
今月1日にロシア・メドベージェフ大統領が北方領土・国後島を訪問した際も、政府は「報道で知った」を連発。情報態勢の不備を批判されていたが、また同じことを繰り返した格好だ。
関係閣僚会議も、砲撃から6時間以上が経過した午後8時45分から開催された。菅首相は、(1)北朝鮮の動向に関する情報収集(2)米韓両国との緊密な連携(3)不測の事態に備えた国民の安全・安心確保−の3点に万全を期すよう指示。仙谷官房長官は記者会見で、「砲撃は許し難く、強く非難する。挑発行為を直ちにやめるよう求める」と批判し、韓国への全面的な支持を表明した。
政府は砲撃戦について「民間人に被害が出ており、最近の南北衝突では最も深刻な事態」(外務省幹部)と憂慮、背景分析を急ぐ。外務、防衛など関係省庁は米韓からの情報収集や日本周辺海域、空域の警戒監視活動強化に全力を挙げる。
羽田空港では午後3時半すぎ、金浦空港行きの日航93便が砲撃のニュースで一時離陸を見合わせたが、午後4時35分ごろ、安全が確認されたため出発。日航によると、韓国往復の便に影響はなく、全日空も通常通りの運航。大手旅行会社JTBは「ツアーに影響はないが、外務省などの情報に注意している」。日本旅行広報室も「延坪島は観光地ではなく、周辺に客もいない。今後もツアーは予定通りだが、情報収集しながら状況を注視していく」としている。