【ソウル】北朝鮮は23日午後2時34分ごろ、黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)に近い海域にある韓国・延坪島に向け砲撃を行い、同島の家屋が火災を起こした。韓国軍も応射したほか、戦闘機を同地域に急派した。
韓国軍によると、韓国海兵隊兵士2人が死亡したほか、少なくとも十数人が負傷した。また島民3人も負傷、1200人は防空壕に避難した。
延坪島に20年間住んでいる女性はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、「近所は一面火に覆われた。多くの家か燃えているが、消防車は来ていない」と述べた。
攻撃を受けたビルのそばに設置されたビデオカメラは、人々がビルから一斉に飛び出してくる姿を映し出した。
北朝鮮と韓国の関係は、韓国が経済支援の見返りに北朝鮮の核兵器開発中止を求めたことから、この2年間で急速に悪化した。北朝鮮がウラン濃縮に使われる何千もの遠心分離器の存在を明らかにしたことから、同国の核問題をめぐる国際的な緊張が高まっていた。
また、北朝鮮の独裁者、金正日総書記が三男の正恩氏への実権の委譲の過程を開始してからまだ2カ月もたっていない。専門家の間では、正恩氏が軍の実権を把握するまでの間は不安定な時期が続くとみられている。
韓国大統領府の報道官は「砲撃はまさに挑発的だ。民間人を無差別に攻撃することは許されない」「韓国軍は戦闘ルールに従って反撃している。我々は挑発に対し厳しく対処する。北朝鮮は相応の責任を負うべきだ」と述べた。
北朝鮮の国営放送は23日夕、韓国軍が軍事演習を行い、北朝鮮領海内で砲射撃したとし、その報復のため延坪島に砲撃したと伝えた。
各国の反応
米国政府は声明を発表し、北朝鮮に好戦的行動をやめるよう求め、「同盟国である韓国の防衛と、地域の平和と安定の維持に全力を尽くす」とした。
中国外務省の洪磊副報道局長は23日の定例記者会見で、「関係国が朝鮮半島の平和と安定のために一段と努めることを望む」と述べ、冷静な対応を求めた。
日本の菅直人首相は全省庁に「情報収集に全力を挙げ、不測の事態に備える」よう指示した。
延坪島は北朝鮮の南岸沖10キロに位置し、約1200人の島民が住んでいる。軍関係者によると、砲撃は予告なしに午後2時34分に始まり1時間5分続いた。最初の砲撃から3時間が過ぎ日が暮れても火災が続き、島は煙で覆われているという。
朝鮮戦争後の1950年代から空爆や暗殺、海上の小競り合いなど両国の軍事衝突は30回以上に及ぶ。今年3月には韓国海軍の哨戒艦が沈没し、同国は北朝鮮の魚雷によるものだとして非難している。