【ソウル共同＝角田卓士】韓国海洋警察当局は24日午後（日本時間同）、北朝鮮の砲撃を受けた韓国・延坪島ヨンピョンド内で、工事現場の作業員とみられる民間人男性２人の遺体を発見した。砲撃による民間人死者は初めて。韓国軍兵士２人を含め死者は計４人となった。

　南北の軍事衝突により韓国の民間人に死者が出たのは、１９９６年に韓国・江陵カンヌン市沖で座礁した北朝鮮潜水艦の乗組員が上陸、銃撃戦に民間人が巻き込まれた事件以来。

　民間人の被害拡大により、韓国で北朝鮮に対する批判的な世論が一段と高まるのは確実。今月28日〜来月１日の黄海での米韓合同軍事演習には米海軍横須賀基地配備の原子力空母ジョージ・ワシントンが展開、軍事的圧力で北朝鮮のさらなる挑発をけん制する構えだ。

　これに対して北朝鮮外務省報道官は24日、韓国を「敵」とした上で、「わが軍隊の砲門はまだ開かれた状態だ」と警告した。米韓の動きに中国も警戒を強めるのは必至で、朝鮮半島周辺の緊張がさらに激しさを増しそうだ。

　中国外務省の洪磊こう・らい副報道局長は24日の談話で、韓国と北朝鮮の砲撃戦について「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」と述べ、前日より強い調子で自制と再発防止を呼び掛けた。

　海洋警察当局は海兵隊官舎の新築工事現場で遺体を発見。この現場で働いていた60歳と61歳の作業員とみて身元の確認を急ぐ。作業員は12人いたが、２人が行方不明になっていた。

　これまでの韓国軍のまとめによると、兵士は２人が死亡したほか、５人が重傷、10人が軽傷。住民は４人がけが。

　在韓米軍によると、合同演習にはイージス艦フィッツジェラルド、同シャイローなどが参加。米韓両軍は「演習自体は砲撃の前から計画されていた」としている。

　韓国軍によると、北朝鮮の砲撃では、延坪島の海兵隊駐屯地にある兵士の兵舎や食堂など12カ所が被弾。聯合ニュースによると、25日には金泰栄キムテヨン国防相が島を訪れ、被害状況を視察する。

　一方、韓国の李明博イミョンバク大統領は24日、菅直人首相やオバマ米大統領に続き、国連安全保障理事会議長国である英国のキャメロン首相とも電話会談。韓国大統領府によると、日米英の各首脳は北朝鮮に自制させるため、中国が果たす役割が重要との見解で一致した。