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【産経抄】11月26日
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今年も忘年会の季節がやって来た。最近はあまり聞かない言葉だが、一昔前には宴席に遅れると、「駆けつけ三杯」を強いられたものだ。遅刻した罰としての酒である。もっとも、江戸時代の火事見舞いに由来するとの説もある。
▼江戸の商家では、常に見舞客のために酒を用意するのがたしなみだった。万が一の際、駆けつけてくれた客に振る舞うためだ。客は茶碗(ちゃわん)酒を飲み干すと、命がけで荷物の持ち出しなどを手伝ったという。
▼「鳶(とび)に油揚げをさらわれる」ということわざは、思いがけず横から大切なものを奪われたときに使う。実は鳶は鳥ではなく、江戸時代には町火消しを兼ねていた鳶職を指すとの異説もある。火事が起こり、町火消したちが出動すると、女房たちは炊き出しに駆り出された。おかずとして大量の油揚げを煮たから、売り切れてしまうというわけだ。
▼いずれにしても、火事に際して江戸の庶民の行動は驚くほど迅速だ。きのうの衆院予算委員会で菅直人首相もまた、北朝鮮の砲撃に対する「迅速な対応」を強調していた。果たしてそうか。報道で砲撃を知った首相は、その後も公邸で、国会対策の話に夢中だったという。
▼官邸に入ったのは砲撃開始から2時間以上も後、関係閣僚会議は午後9時ごろようやく開いた。あきれたことに、岡崎トミ子国家公安委員長にいたっては、一度も警察庁に登庁していない。
▼「有事」発生は、政権浮揚のチャンスとの見方があったが、とんでもない。きのうの小紙は、北朝鮮が、日本全土を射程圏に収める中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射実験を準備していると報じた。すでに菅政権の危機管理体制は“炎上”しているというのに。