韓国・延坪島(ヨンビョンド)を砲撃した北朝鮮を牽制する、米韓合同軍事演習が28日から黄海で始まる。米原子力空母も参加する大規模演習に、北朝鮮は「戦争前夜だ」と軍事的挑発をチラつかせるほか、中国も反対を表明した。緊迫する朝鮮半島。一方、韓国政府は北朝鮮に対抗する軍備増強を進めることを決めた。
世界が注視する軍事演習には、米軍からFA18など戦闘機70機の空母飛行団を艦載する主力原子力空母ジョージ・ワシントンに加え、イージス艦「ステザム」「フィッツジェラルド」「シャイロー」「ラッセン」、巡洋艦「カウペンス」など、強力な破壊力を誇る艦艇が集結。
韓国軍からも4500トン級駆逐艦2隻、哨戒艦、護衛艦、哨戒機P3Cなどが加わり、米韓の兵力7000人規模となる。
北朝鮮の奇襲攻撃を受けて演習が決定したため、今年7月、日本海で行われた合同演習(8000人)に比べると規模は下回るが、老朽化や燃料不足も指摘される北朝鮮軍に対し、圧倒的な軍事力を示し、牽制する狙いは達成できそうだ。
これに対し、北朝鮮は「李明博(韓国大統領)逆徒が米国を巻き込んだ反共和国謀略対決騒動」と酷評した。さらに「対決を強要すれば、われわれも避けるつもりはない」「対決には対決で、戦争には戦争で断固と立ち向かう」と徹底抗戦を主張している。
「血の同盟」関係にある中国外務省も26日、米韓合同軍事演習を「中国の排他的経済水域(EEZ)で許可なく軍事行動をすることに反対する」とした洪磊副報道局長の談話を発表した。
米韓軍と北朝鮮の小競り合いも懸念されている。砲撃のあった延坪島では26日午後、北朝鮮側から、再び砲声が聞こえ、住民らが防空壕に逃げ込む騒ぎも。不測の事態が起きる可能性もある。
ただ、専門家の間では「訓練に参加する米韓の艦艇や航空機と、北朝鮮の軍事力では、歴然とした差がある。米韓が報復攻撃すれば、北朝鮮は一瞬で負け戦になるため、艦隊への直接的な手出しはしない」(軍事ジャーナリスト)という見方が強い。
こうした中、韓国政府は軍備増強を決定した。北方限界線(NLL)を挟んだ黄海沿岸では、北朝鮮軍が兵力10万人、1000の砲門に対し、韓国軍は兵力5000人で、18門と歴然の差があるからだ。
李大統領の指示を受け、来年度予算案では1兆4000億ウォン(約1012億円)が計上。これにより、自走砲を約100門、F15戦闘機を8機程度増やすことができるという。
朝鮮半島情勢の緊迫化を受け、菅直人首相は米韓合同軍事演習が終了する来月1日までの間、全閣僚を都内で待機させ、緊急事態発生時には1時間以内に所管省庁に登庁することなどを指示した。