北朝鮮が、韓国・延坪島を砲撃したことは、許し難い蛮行といえる。まずは、亡くなった韓国国民4人のご冥福を心からお祈りし、被災された島民の方々にはお見舞いを申し上げたい。そのうえで、北朝鮮に対しては断固として抗議したい。
弾道ミサイル発射や核実験など、これまでも北朝鮮は国際社会を注目させる暴挙を繰り返しながら、米国が直接的な軍事行動を起こさない程度で踏みとどまり、自国に有利な果実を得るという瀬戸際外交を続けてきた。
1993年から94年、2006年から07年の核危機では、国際社会は結局、北朝鮮に手を差し伸べることになり、彼らに時間と余裕を与えてしまった。北朝鮮指導者の世代交代が目前に迫った現在、二度と同じ轍を踏んではならない。
かつて、米国主導で、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」に対する金融制裁(北朝鮮資金の凍結)が断行され、北朝鮮に甚大な打撃を与えた。今回も、容赦のない金融制裁、経済制裁に踏み切るべきであり、日本から主張してもいいのではないか。
しかし、菅政権の感度は鈍い。その危機管理能力はお粗末極まりない。
菅直人首相は、韓国と北朝鮮が交戦状態に入り、周辺事態にも発展しかねない一大事なのに、一報を聞いた後も、民主党国対委員長代理と公邸でのん気に会談していた。官邸入りしたのは発生から2時間以上後。当初、「一報は報道で聞いた」と公言していた。
閣僚らも緩みきっている。危機管理の責任者である仙谷由人官房長官は、首相より遅れて官邸入り。治安担当の岡崎トミ子国家公安委員長に至っては、警察庁に顔も出さず、発生から5時間半も過ぎて官邸に到着した。国防にかかわる緊急事態に対処するための安全保障会議も招集せず、海外の軍事情報を収集・分析する防衛省情報本部長も呼ばなかった。
自民党時代はまったく違った。私が首相就任直後の韓国訪問中にも、北朝鮮が核実験を強行することがあった。直ちに、東京の塩崎恭久官房長官(総理臨時代理)に指示して安全保障会議を招集させ、情報収集と対応策の立案にあたらせた。
民主党が、危機管理で醜態をさらし続ける背景には、政権中枢に君臨する仙谷氏が、自衛隊を「暴力装置」と呼ぶような、思想的問題があるのではないか。
自衛隊員には「服務の宣誓」が義務付けられている。その宣誓文は「私は、我が国の平和と独立を護る自衛隊の使命を自覚し…」で始まり、「強い責任感を持って専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身を以て責務の完遂に努め、持って国民の負託に応えることを誓います」と続く。極めて重い誓いというしかない。
国家や国民を守るため、自衛隊員は常に危険と隣り合わせで任務に当たっている。仙谷氏の言葉には、彼らに対する敬意や配慮はみじんも感じられない。
今回の砲撃事件を「神風が吹いた」などと喜んでいる人物が属する政党や、一党独裁国家のように、自衛隊行事での民間人による政権批判を封じるような政権には、とても国は任せられない。(自民党衆院議員)