「たとえ支持率が1%になってもやめない」(菅直人首相)--なんてことは、口が裂けても言っちゃいけない。自分はここ数代の“お坊ちゃん”首相とは違い“途中で投げ出すなんてことはしないよ”というメッセージだとは思う。しかし「1%でもやめない」と報道されると、この人は民意をどう考えているのか、と疑ってしまう。その後鳩山由紀夫前首相が「あの発言は菅さんではなく、支持者が言ったものだ」と訂正したようだが、今の民主党の動きや後継人材を考えると、支持率がさらに低落しても菅首相で押し切る腹積もりだな、と思ってしまう。
支持率が20%を割ったら政権末期症状、10%を切ったら即辞任というのは、国民の間にできたある種のコンセンサスにもなっている。そのことは過去の歴代政権の実例が示している。にもかかわらず強引に続投すれば、首相権限の乱用で暴君になってしまう。粘り腰は評価するし、首相が次々と交代するのは、国際的にもみっともない。しかし、続投を宣言するならまず今の経済不安や就職難にあえぐ若者たちの状況を具体的に改善することが第一だ。さらに尖閣や北朝鮮、農業改革(農業の自由化と競争力強化)など、焦点の問題に対して決断力、スピード感のある対応を見せてほしい。
一方、米韓軍事演習によって中国や北朝鮮が妥協の姿勢を見せてきたようにも思える。それは米国の“砲艦外交”のせいなのか。日本はこの過程でどんな外交姿勢を見せ役割を果たしたのか、それとも米韓の動きを論評したままで、日本が砲艦外交とは別に何らかの役割を果たしていたのか。
どうも最近の政権は、自分たちの進退や支持率、野党対策など内向きの国内政治ばかりに目が行き、国際社会における日本の存在感や位置、方向性などについて、あまり深い思考がみられないのではないか。そのあたりを十分に総括し、国民に説明しておかないと、このままでは日本にも砲艦外交論が高まり、核配備なんていう世論が高まりかねない。菅さんは自分の進退もさることながら、日本の軸、進路が正念場にあることを肝に銘じてほしい。
2010年12月1日
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