■アニメ監督ひねもす日記 - 最新エントリー

昨日、オープロのなみき氏のBlog上で、臨時総会開催案内に同封した書面が公表されていると聞き、先ほど確認しました。

その書面に対し、なみき氏が感じておられる疑問を追記されていました。
その内容は11月に私が直接オープロにおうかがいしてお聞きした内容とほぼ同じです。

その際、2時間に渡って私見をお話いたしました。

ただ、あくまでそれはヤマサキ個人の意見であってJAniCA理事会の総意ではない事をお伝えした次第です。

その翌々日、11月20日にJAniCA理事会が有りましたので「さらに疑問があればそこにお越しください」とお話してました。
そこでなみき氏は「川本喜八郎さんを偲ぶ会」へのご出席を途中退席されて駆けつけられました。
氏がお越しになった時には、理事会はほぼ終了間際だったので私と井上理事が会場に残り、その後2時間、前々日と同様の質問に対し井上理事からこれまでの経過説明を行ないました。

従いまして、現在なみき氏が我々から本気で聞き出したい情報は、ほとんど無いはずです。

ただ、我々としては理事会の決定事項として、この問題をオープロのホームページ上で正式なコメントとして公開することは望ましくないと判断したため、書面ではなく総会での対応にしたいとお伝えいたしました。

また、なみき氏の要望を受け入れ、会場の予約などを含め、現実的に開催が可能な日時として2月の臨時総会も決定いたしました。

この決定に至るに際し、私はなみき氏の現在の行動が、本当に芦田前代表の意思を反映して行なわれているのかを疑問を感じました。

そこで、6月の段階で芦田代表と行動を共にされ、JAniCA内部の結束を願って奔走されていた奥田誠治さんやスタジオライブの神志那くんと直接会い、芦田さんの現状やお二人が知る限りでの芦田さんの意思をお聞きしました。

その結果、辞任から半年が過ぎ文化庁事業もほぼ完成の目処が立っていることを考えれば、情報の詳細を公開することも良いのではないかとの結論に達した次第です。

しかしながら、現在なみき氏が行なっているJAniCA執行部への因縁のつけ方は、とても芦田前代表の意思で行なわれているとは思えませんでした。

スタジオライブの運営を任されている神志那くんでさえ「なかなか芦田さんとの連絡が取りづらい」「JAniCAに関してはほとんど話を聞いていない」という事でした。
ただ、全ての情報を公開するのであれば、なんにしても芦田さんと文化庁との経緯に到った真意を、芦田さんの名誉のためにもちゃんと伝えて欲しいと要望を受けました。

もちろん、当時、芦田代表と行動されていた奥田さんにもお話をうかがい、総会では全ての経過報告と、今後のJAniCAの運営方針を会員の総意として決めて行きたいと思っています。



さて、その上で今なみき氏の行なっている行動をどのように理解すればよいのか?
正直に申し上げ、私には理解出来ないのが現状です。

私たちとしては精一杯、誠実に対応しているつもりなのですが、なみき氏にはそう受け取られていないように感じます。



これから先は、あくまでヤマサキ個人の感想ですが、ご本人自ら「業界ゴロだ!」とおっしゃっているように「俺を敵に回したらうるさいよ」と言う事がおっしゃりたいのかとも思います。
「何がお望みですか?」とお聞きしても、表向きの疑念を繰り返し主張されるだけですし「その裏に隠されている真意はお前たちで考えろ」と言わんばかりです。

この手法は客商売の店に上がりこんで、騒ぎを起こし袖の下を要求するチンピラやゴロツキの常套手段を連想させます。
「俺をおとなしくさせたいなら、それなりのやり方があるだろう?」という事で、お店は困って「不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」とお金などを包んでその場を収めるのですが、今なみき氏がやられていることは私にはほとんどこれと変わらない因縁を着けられているように感じます。

しかし、私としてはどんなにゴネられても痛くも痒くも無いので
「どうぞ勝手にしてください」というレベルです。

少なくともなみき氏の表向きの要求にはお応えました。

応えられない部分に関してもその理由はお伝えして有ります。

その上で「金銭的な不正を暴く!」等と息巻いておられますが、いったい何の不正を暴くのか?
その具体的な方法も無く、声高に自己の正義を語られてもむなしいだけです。

本来ならば文化庁事業の収支に関しては、3月に事業の全ての書類を完成させ、その支出の詳細を文化庁>会計検査院に提出した段階で、総会でも皆様にお伝えする事項だったのですが、
2月に繰り上げる事で、会計検査院の審査をまだ受けられない議案となり、事業の内訳に関しては総会後に改めてお伝えする事になると思います。

また、参考までにお伝えしておきますが、
本年、他団体で受託した同様の行政事業に関して、金銭の不正流用が発覚し、“事業費の返還命令と今後数年にわたる同団体への行政支援の停止”が発表されています。

このような事が無いように、との通達を文化庁からもいただいておりますので、事業の執行者が私的に金銭を流用する事のないよう、私どもとしても支払いに関しては随時チェックしてまいります。

なんにしても、さまざまに疑問をお持ちで現執行部に不満を感じていらっしゃる皆様は是非総会にお越しいただき、ご質問ください。

なみき氏にJAniCAを任せたいとお考えの方々が多数おいでであれば、それはそれでまったくかまいません。

職務を任されている以上は私たちなりに精一杯、JAniCAの事を行なってまいりますが、ヤマサキは要らないとおっしゃっていただけるのであれば、誠実に運営される後続が現れる事を期待して、いつでも代表職も理事職もお譲りいたします。

今、騒ぐだけ騒いで、先々のビジョンも持たないままJAniCAの運営が先細って行かないことを切に願いますが、それも含めて総会でそれぞれのご意見をください。

期待しております。
今日は、日本映画監督協会の広報委員会に出席してきた。

広報委員長の井坂聡監督はじめ、渋谷昶子監督、舞原賢三監督、石川均監督、檀雄二監督、望月六郎監督など、錚々たる方々と来年に向けての方針を話あった。

「来年は著作権イヤーにする!」と、いつもながら熱い面々。
その後は、いつもの中華料理屋で、情報交換と称して楽しい懇談会。

熱い思いが未来を切り拓くのだなあ、と実感する。

JAniCAの運営にもこの情熱が活かせるといい。
「なに言ってんの?意味不明」と言われそうだが、これは私が初めて監督を務めた『戦国奇譚・妖刀伝』の制作中に、プロデューサーが教えてくれた言葉だ。
当時、私は25歳くらい。その方もまだ30代前半だったのだと思う。

要約すると、“個人の消費と企業の投資は本質的にお金に対する考え方が違う”という話。しかし、アニメーターの多くはその事を解かっていない気がする。

プロデューサーいわく
企業の各事業部には毎年、年間予算という形で使う予算が割り当てられる。
たとえばその金額が5億円だったとしたら、プロデュースをまかされた人間はその予算の使いどころを考えて、いろんな事業にどう投資するかを検討する。
映像事業部であったその方の部署も例外ではなく、アニメや実写の企画のどこにどれだけ金を使うかを検討する。

この年間予算。使わないとどうなるかといえば、その部署を維持するための社員の人件費や家賃、光熱費、通信費等の固定経費が確実にかかっていくので、そのままでは確実に無くなって行く。
だが、予算を使い作品(商品)を作る事で、それを販売すると利益が回収できる。
その回収金額が当初の予算と同額の5億円で利益が出なかったとする。
それでも、1年掛けて5億を使い5億円が回収できれば、翌年にはまたそのお金を使って同規模の事業をおこなう事が出来るのだ。
企業がお金を使うというのはそういう事なんだよ。という話をされたわけだ。

もちろん、投資金額に回収利益が届かない事もある。
それが赤字というものだが、他でヒット作が出ればその赤字分を相殺する黒字になる可能性もある。
何もしなければ確実に赤字に成っていくのに対し、投資する(お金を使う)事で仕事になり、報酬を受け取る事が出来る。
そんな可能性が生まれて来るんだよ。だから頑張っていい作品を作ってね。
と言うことだろう。

アニメーターがこの事を、しっかり認識して仕事が出来ていたら、現状のような環境に成っていない気がする。

私は20代半ばで、そのプロデューサーと仕事が出来たおかげで、作品制作が自分に任された投資の一つの形であると認識する事が出来た。
そして、それを教えていただいた事を非常に感謝している。

企画の出し方や通し方、企業との交渉の仕方にしても、まずは相手と同じ価値観で話をしなくては、交渉は成立しない。

我々に支払われている賃金は、たしかに作業に対する労働対価では有るが、同時に投資資金の一部運用を任されている事と同意なのだ。

ヒット作品に関わり、それなりの実績を残せれば評価も上がるが、売れない作品を作ってしまうと信用を失う。

「アニメーターの中には賃金が安すぎる。もっと金をよこせ!」と声高に叫ぶだけの人が居るが、出資企業から言わせれば「あなたの作品はまったく売れてなくて、我々は多大な赤字なんですが?」という話に成っていたりする。
「売れた時くらい利益還元をしてくれてもいいんじゃないか?」と言う意見もたしかにと思うが、それを主張するのなら我々は自分達の権利と義務をしっかり認識して交渉に臨むべきなのだ。

文化庁の事業に関して、未だに「JAniCAの不透明性を・・・」、「JAniCAはボランティア組織じゃなかったのか?」などと抗議のメールを送ってくる人がいて、もはや説明する気力も失せてしまいそうなのだが、誰がいったいJAniCAがボランティア組織なんて話をしたのか教えていただきたい。

現在、数あるNPO法人でさえ、実務者はボランティアではない。
一般社団法人のJAniCAの運営を、ボランティアと決め付けているとは、残念でならない。

確かにJAniCAの現状は会費収入も少なく、理事や運営委員の労務に対して対価をお支払い出来ないことも事実である。
従って結果的に我々はボランティアのまま、さまざまな業務を行なっている。
だが、その事は言い方を変えれば、嫌になったらいつだってこの組織を投げ出せるという事なのだ。

労働対価を受け取っていない代わりに、責任も義務もない。
本来、権利と義務は対に成っているべき物なのに、日本のアニメ業界ではそのことがうやむやに成っている。
思い当たる事がないですか?

アニメーターに仕事を出すと仕事を持ったまま突然連絡が取れなくなったり、納品期日が来ても納品物が出来ていなかったりするでしょう…?

その事を制作の人間に攻められるのが嫌なので、そのタイプのアニメーターはまっとうな金銭交渉をしない。
義務や責任を負わなくて済むように、権利も主張しない。
逆にやる気と責任感のあるスタッフが対価以上の仕事を懸命にやって、すごくレベルの高い仕事をしているにもかかわらず、金銭交渉の習慣がないために極貧に喘いでいたり。

そんな業界の構造が、アニメーターの待遇を何十年も賭けでグダグタなものにしてきたと私は思う。

全ては、権利と義務を明確化していないために起こっている問題なのだ。

我々は、そんな感覚のまま、行政の事業を進めるわけにはいかない。
関わるすべてのスタッフには仕事として責任を持ってこの事業には携ってもらいたい。
そのためには、それに見合った対価もお支払いする。

総会でも話があったが、今回の事業に関わる方の人件費は時給1万円に成っている、これを高いと思うか、安いと思うかは、人によると思うが、私は決して高いとは思っていない。
日本のアニメ業界のトップクラスで仕事をしている方々や国家資格を持った人に支払う時給なのだ。
これくらいは稼いでもらわないと下の人間が困る。
我々は自分達の価値を自らおとしめ、ダンピングする気は更々ない。

大体、私に言わせればボランティアで組織運営していることほどいい加減な事はないと思っている。
ある時、突然全てを投げ出されても責任の追及さえ出来ない、そんなボランティア的な意識で仕事をしてもらっては困るのだ。

もちろんボランティアの精神自体は尊いものだと思う。

しかし、そこに全て頼ってなんとかなるはずがない。
そして「アニメーターは貧乏なんだ!賃上げをしろ!」と弱さを武器に戦うことほど惨めなものもない。

出資者も、制作者も、ユーザーも皆が幸せになるために作品は作るものだ。
そのためのチャンスと権利と義務は本来、制作者である我々に託されている事を解かっていない事が貧しいアニメ関係者の一番の問題点だと私は考えている。

・文化庁事業に対する意識のズレ。
・作品制作に関わる賃金体系の歪さ。
我々を取り巻くこれらの問題は権利と義務をあいまいにし続けた結果が招いているアニメ業界の悲しい現実なのだと、もういい加減に気づいても良いのではないだろうか?

せめて30歳も過ぎたらそれくらいのことは解かるようになっていただきたい。
一般社会ではそれくらいは常識なのだから・・・。
さて、代表に就任して2ヶ月が過ぎようとしていますが、つくづくJAniCAの理事職は割に合わないと痛感しております。
前代表の芦田さんから、「よく引き受けたね。大変だよ」と言われましたが、まったくその通りです。
文化庁からの2億円の事業委託を受けていても、我々理事は相変らず無報酬でボランティア運営である事に変わりはありません。
責任と義務だけが重くのしかかって来て、情報開示の不手際に対しても散々な言われようです。

TVシリーズの監督業と平行してこの立場を3年間も続けてこられた前代表には頭が下がる思いです。

とは言え、誰かがやらなければアニメーターやアニメ演出家を取り巻く環境は改善しないのも事実。
その事を考えれば、芦田さんが旗を振られ、その意志に賛同した者としては『なんとかこの組織をちゃんとした形にして行きたい』そう思うのです。

かつてJAniCAが設立される前、今から5〜6年前に私は新人アニメーターの困窮する現状を見かねて、関東経済産業局に現状の改善をおこなうための相談に行った事があります。

一枚200円の動画単価を続けてはアニメーターの新人は育たず、日本のアニメ界は遠くない将来、国際競争力どころか制作力自体を失ってしまう。
「行政指導による最低賃金を保証する方法は無いものか?」と訴えたのでした。
しかし、担当の方から返ってきた応えは、「なぜ、そんなに低い労働単価なのに皆さん仕事を請けるのですか?」と言う、扱くシンプルな疑問でした。
「一枚1〜5円の袋貼りやネジの仕分け梱包作業の単価が適正か?適正でないか?それはその金額で請け負う人が居るか居ないかで我々は判断します。その金額で受ける人が居るのであれば、それは適正価格なのではないですか?」
と聞かれたのです。
「アニメの場合は袋貼りの内職とは中身が違って・・・」と仕事の質や業界においての新人アニメーターの意味を懸命に説明したのですが「では、なぜ会社や業界が自ら新人を育てないのか?」と続いたのです。
たしかに、この業界に関係の無い立場から見たらまったく理解出来ない事が平然とまかり通っているのがアニメ業界の現状です。

そんな折、芦田さんを中心にアニメーターの労働環境最善を掲げて、JAniCAが発足しました。

この三年間、JAniCAは文芸美術国民健康保険や東京芸能人国民健康保険などの健康保険への加入促進。
業界人でさえ正確には把握していなかった、アニメーターの賃金体系を調べた昨年のアニメーターの労働実態調査。
そして、今年文化庁から『若手アニメーターの人材育成事業』の運営管理委託を受けその成果を残すべく日々業務を進めております。

「こんな内容で、新人が育つもんか・・・」等と批判する声も聞きますが、では声高に叫んでいるあなたは何をしているのか?
自身の胸に手を当てて、懸命に動いている人間を批判できるほどの人間なのかを問うてみるべきだと思います。

実は私自身「このプロジェクトで優秀な新人が育つのか?」と内心疑問に思うところがあるのも事実です。

前に、このBlogにも書いていますが、私はアニメーターの若手に必要なのは、ちゃんと仕事をしているなら最低限生活できる賃金が支払われる事こそが、次世代を育てる土壌を作ると考えています。
技術なんて、食えて、続けていけて、周りに優秀な先輩達が居る環境さえあれば、ある程度ついて来るのです。

新人アニメーターの動画単価の見直し。

この改革を行なうためには、個人事業主という弱い立場から訴えるより、国家プロジェクトとしてトップダウンで行政指導を業界全体に行なってもらい、国内のアニメーターに動画を発注する場合は最低単価を300円以上にすると言う業界ルールを決めてもらうことが必要だと思っています。
そのためには行政との信頼をいかに築くかが重要だという思いで、今回の事業に取り組んでいるのです。
そんな事をしたら動画の全ては海外に流れるという人も居ますが、そうなったら10年後の日本のアニメ産業は無いと思うしかありません。

現在、若手の優秀なアニメーターの数が目に見えて減ってきている最大の理由は、新人への劣悪な賃金設定が原因で、その事が若い原画マンの質を下げ、作画監督の負担を増し、スケジュールを圧迫し、制作利益率を減らしているのです。

どのみち現状を放置すれば10年後には日本でアニメなど作れなくなります。
その事が解かっていない業界なら、それまでの業界と言うことです。

さて、そんな話の最後に文化庁事業の管理費としてJAniCAにまかされた6000万円の事務管理予算に関して、実際には業界のためにも後輩のためにも、何も動いていないクレーマーの方たちが、JAniCAに対してさまざまなネガティブキャンペーンを張っているようなので、私から答えられる範囲でこの話題に対して話をしたいと思います。

普通に考えればクレームをつけている方は、一個人でしか仕事をした事のない方なのだと思います。
6000万円なんて会社経営をした事がある人間なら誰にだって解かるはずですが、アニメの孫受け会社の年間固定費にも満たない金額なのです。
人件費や地代家賃、光熱費、通信費、設備費、運送費、会議費・・・等々をまともに換算すれば、これだけの事業を管理運営するのに掛かる費用としては、足りないくらいです。
それが使途不明と騒ぐこと自体が私には理解に苦しむ内容です。

クレームを付けて来ている方は、企画が通って作品制作を行なっている会社に支払われている金額の倍近い金額をなぜJAniCAがもらうと叫んでいるのでしょうが、あちらは実質3〜4ヵ月で作業が終了するのに対して、事業を管理する我々は、ほぼ1年を掛けて全ての書類や資料を整理、作成し、報告書にまとめなくては成らないのです。
選考委員会や育成委員会、ヒヤリングチームなどに協力してもらうJAniCA内外のアニメ関係の皆さんにも時間と労力に応じて、金銭的に労働対価をお支払いしていきます。

「それの詳細な内容を開示しろ!」と騒いでいる方。
ご自分では社会正義のために叫んでいるつもりでしょうが、いったい業界のためにあなたは何をしているのか?
率直にお聞きしたいものです。
現在、本事業に関する費用はまだJAniCAにはまったく入金されていませんので、準備に掛かる経費も全て関係者が持ち出している現状です。(本件に関してはJAniCA会員から集めている会費からの持ち出しは一切行なっておりません)
そんな状態で予算が来年の事業完了した段階で、誰にいくら払われるか等、現段階では確定のしようも無いのです。

ただ、なんにしてもアニメ関係者(特にアニメーターや演出家)の社会常識の無さを疑いたくなるのは、これら膨大な管理事務作業を行なう事がどれ程大変な事かを理解していない点です。

それが解かっていないから、制作進行の人間にひどい事をするし、制作会社のプロデューサーとまともな交渉も出来ない。
結果的に、作品本数が減ると真っ先に干されて仕事を失うのです。
自分のやっている事を振り返って客観的に考えてください。

自身の社会性の無さと、経験値の低さが、自分自身の現状を生み出していることに気づかないと、問題は何一つ改善しません。

JAniCAが掲げるアニメーターの労働環境の改善は、関係者一人一人の意識レベルの改善から進めていかなければ、実現は程遠いと思います。

自分達を取り巻く環境は自分自身が生み出している事。

同じ業界に居て、年収1千万円を超えている人間と数百万円にも満たない人間はいったい何が違うのか?
その本質は、業界の環境ではなく自分自身の資質にある事を自覚すべきです。
技術が有るとか、無いとか、そんな事が100%の原因ではないですよ。

こんな事を書くとまた、クレームが来るんだろうな〜ぁ・・・。

まあ、それはそれでいいですけどね・・・。

ちなみに、6月の総会で白紙委任状を集めて、前代表を解任した等という噂も飛び交っているようですが、芦田さんが委任状を使って解任された事実はありません。

私はその日の理事会にも運営委員として参加しておりましたが、辞任された前理事の方々は自分の意志でそれが良いと判断されてお辞めになったのだと現場に居た人間として認識しております。

もし仮に、噂のような解任動議が発動したのであれば、参加していた会員の多くがその現場を目撃しているはずです。

総会の警備に関しては、たしかに過ぎた人数になっていたと私も感じましたが、前日までのJAniCA内部(芦田代表と神村理事)の人間関係の拗れが総会に影響する事を恐れて監事がもしもの事を考えて、手をうっていた事は後日の理事会で報告を受けました。
お二人は結果的にそのJAniCA内部のゴタゴタの責任を感じて、辞任されたわけです。

すごく長文になってしまいましたが、私の思うところをまとめてみました。


私が監督をやっている『薄桜鬼』おかげさまで好評の内に秋から第二期が始まります。
寝る時間を削ってのJAniCA関連作業がボランティアって言うのもどうなんだろう?
そんな思いも有りますが・・・。

『人が動けば、時代が動く!』

アニメ関係者は今、自分達に風が吹いている事に気づくべきです。
今、ちゃんと動けた人間は次代に何かを残せるかもしれません。
今日、NHKのラジオ第一放送の夕方ニュースにゲストとして出演した。
夕方のニュース番組であるため時間的な制限も有り、生放送でもあったことから、個人的には反省点も多くどこまで上手く話せた悩む所だ。

NHKのディレクターから午前中におおよその質問内容を事前に送ってもらったので、アンケートのようにこちらの答えを渡す事にした。

放送では時間の都合や会話の流れ上、割愛された内容もあるがこの質問は業界外の方々の純粋な疑問なのだと思う。
せっかくなので今回はNHKの番組用の質問に私が答えた、Q&Aの内容を公開してみたい。


●今日のテーマは、『アニメの殿堂は止めたけれど・・・日本のアニメ産業の今後を考える』です。
文部科学省は、2009年度の補正予算の見直しで、117億円が計上されていた国際メディア総合芸術センターの建設中止を正式に決定しました。
建設中止どう見ますか?


ヤマサキ:
JAniCAの立場としては残念です。 私個人としては完成後のランニングコストを誰がどう責任を持つのか?そういう懸念があったのでこの結果は悪くなかったと思っています。

●日本のアニメ、漫画などは、世界中から非常に人気が高く、不況の中でも国際競争力を持つ分野として、また観光資源としても、成長が大いに期待されています。
しかし、成長産業とばかりいっていられないデータも。デジタルコンテンツ白書によれば、07年のアニメ産業規模は2396億円。
6年のピークより190億円マイナス。テレビ放映やDVD販売減少。現在の状況は?


ヤマサキ:
それでも世界中でこんなに多様で大量のアニメ作品を作り続けている国は日本しか有りません。
作品的な数の減少は世界的な経済不況の影響もありますし、なによりインターネットの普及やデジタルメディアの発達による販売メディアの変化に商品形態が追いついていないことが原因だと思います。


●日本のアニメ業界では、もともと海外マーケットを意識していなかったし、してこなかった、という京都精華大学の津堅教授のご指摘、ヤマサキさんどう思いますか?


ヤマサキ:
その問題はアニメだけでなく日本の特殊性が原因だと思います。
携帯電話やパソコンの黎明期にも起こりましたが、この狭い島国に1億人のマーケットが存在してGDP(国民総生産)が世界のトップレベルにあることで、ガラパゴス現象と呼ばれる国内市場完結型の産業構造が出来やすい。
その事が世界に類を見ない独自進化した漫画やアニメの文化を生み出したのも事実だと思います。
それが今、少子化の影響も有り、産業経済的には行き詰まりを迎えている。
子供向けの番組はどれだけ多くの子供達が見ていても絶対数が少ないと視聴率が稼げない。
結果的に対象ユーザーの年齢を上げた作品しか作られなくなり、作品の多様性が失われていると感じています。


◇海外マーケットへの進出のため、国がとってきた政策はこれまで功を奏してきた?今後何が必要?


ヤマサキ:
今までの国の政策がどのようなものがあるのか詳しくわかりませんが、日本の最も優れた資源は平均的にレベルの高い人材資源だと思います。
今回政府が掲げた子供の育児支援や学校教育の無料化は、結果的に我々の産業にもプラスの効果として現れると思います。
本来、子供向けの番組の方が海外では売りやすい。
日本は少子高齢化と言われていますが、世界的にはまだまだ人口は増え続けていて、アニメ番組の需要は後進国の経済成長とともに膨らんでいると思います。


●商品を売る、という支援だけでなく、‘作る’支援も求められている。民主党政権では、ハコモノ支援ではなく、人材育成に力を入れるとしている。しかしそもそも作る環境である製作環境が、待遇面も含めあまりにも劣悪な状況だということがヤマサキさんが所属する日本アニメーター・演出協会の調査で明らかに。


ヤマサキ:
そうですね。
アニメーターの新人は年収で100万円程度しか稼げていません。
それが実態です。


○なぜこうした状況が?


ヤマサキ:
アニメ制作はその実現場である制作会社のほとんどが下請け企業で、制作リスクを回避するためにアニメーターを新人の時からフリーランスとしてしか雇用しないからですね。
まだ一人前になる前から出来高で仕事をさせられる。
結果的に収入が低く生活出来ない。
そのために離職率が極端に高くなる。
さらに彼らは立場的に弱いために賃金交渉が出来ない。
特にデジタル化が進んだここ10年あまりで優れた若手スタッフが出てくる率が極端に減っているのは、そのような理由による所が大きいと思います。
月に4〜5日くらいの休日で1日10時間以上働いていて手取りが月に10万円以下。
これは厚生労働省が正式に業界に対して行政指導を行なうべきレベルの問題だと思います。


●待遇改善、誇りを持った仕事にしていくため、何が必要か?国ができることは?


ヤマサキ:
国にやっていただきたい最も直近の問題は、新人アニメーターの生活改善のための業界への指導と支援です。
ただし、本来は業界全体の問題として、育てた新人の引き抜きの規制や製作予算配分の見直しなど、動画協会に加盟している各制作会社や我々現場の関係者が、自分達の問題として次世代を育てる取り組みを行なうべきだと考えます。


○日本のすばらしいアニメの力、どう今後つないでいくか、技術、知恵、製作体制など、制作者サイドからの提言あれば。


ヤマサキ:
アニメの制作技術は映画同様100年以上かけて我々の先輩達が築き上げてきた知識や技術の蓄積があります。
そのノウハウを伝えるためには今現役でやっている我々の世代でも後10年くらいしか現場では教えられない。
最低限の生活の保障を行なった後は知識と技術の伝承とそれを使った作品の制作発表の場が必要です。
今40代〜50代前半の多くの監督はビデオデッキの普及期にOVAブームの中で自分達の作品を発表するチャンスがあった。
宮崎さんや高畑さんたち60代〜70代の先輩達は映画やTVの黎明期にチャンスを得ています。
今の若い世代は携帯電話やネット配信用のコンテンツ制作に目を向けるべきです。
それらが商品として価値の有る物になるような経済的な仕組みづくり。
そして、そこに投資をしてみようと考える企業への支援。
そういうものが今一番求められている事だと思います。
『才能とはなにか?』

昭和50年代半ばに、県立熊本工業高等学校インテリア科を卒業してアニメ業界に入った4人の先輩後輩は現在、全員がTVアニメの監督になっている。

『地獄少女』『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん! 』等の わたなべひろし 監督

『PEACE MAKER 鐵』『トリニティ・ブラッド』等の 平田智浩 監督

『魔人探偵脳噛ネウロ』『RAINBOW-二舎六房の七人-』等の神志那弘志 監督

そして、『地球へ…』『イタズラなKiss』等の監督をやっていてるである。

その後、この業界に進んだ後輩が居るのかどうかは判らないが、私の知る限り私の上下5年間でアニメ業界に進んだ同校の卒業生は100%プロアニメーターとして仕事を成り立たせ、結婚もし、それなりに評価される立場で仕事が出来ている。

アニメーターの離職率が80〜90%といわれる中で、それはある意味驚異的な事実かもしれないが、人材育成を考える上でなにが必要だったのかを知るためには、この自分たちの経験を分析する事がもっとも本質を理解する近道である気がする。

「プロの世界でやっていけるようになるには才能が必要だ!」

学生時代、親にも高校の先生にもそう諭され、アニメーターを目指すよりもっと手堅い、一般的な仕事を目指す事を薦められた。

才能が無いと絵描きでなんか食っていけない。
そう言うことが言いたかったらしい。

だが、その大人たちが助言する時に使う才能と言う物はいったいどういう物なのか?

その事を明確に答えられる人間がどれだけ居るだろう?
才能という言葉でなんだか解かった気になっているだけで、その本質を理解しようとする人間はほとんど居無い気がする。

先の事例を基に考えると、私の先輩や後輩はおそらく才能が有ったのだ。
それはどんな物だったのか?

・絵がものすごく上手かった?
・映像センスがずば抜けていた?
・学習能力が高く、非常に器用だった?

他の先輩や後輩の事は判らないが、私に関して言えばおそらく上記の3要素は全て人並みだったと思う。

学習能力で言えば熊本工業という高校は、県内の実業高校の中ではトップレベルだが、中学段階のクラスの偏差値で言えば中位の偏差値レベルの人間が集まっていた。
私自身、その高校のクラス内でさらに真ん中辺りの成績だった。

映像センスに関しても、アニメや映画は好きで良く観てはいたが、知識レベルで言えばもっともっと映像に詳しく評論家的な知識を持つ人たちが世の中には驚くほどたくさん居る。

絵がすごく上手かったのかといえば、これも学生時代に描いた自分の絵と現在専門学校で教えている学生の描く絵を見比べるとはるかに今の学生たちの方が絵は上手い気がする。
事実、20数年前にアニメーターになった当初、私の周りには絵の上手い人たちが泣きたくなる程たくさん居た。

だが有り難いことに現在、私より絵が上手かった多くの人たちは業界を去っていたりする。

したがって上記の3要素がアニメーターとして『やって行けるか』『行けないか』を決める才能という物ではないことが判る。

では、離職して行く人間と形に成って行く人間は何が違うのか?

『才能の本質はきっとここに有る』

15年間、専門学校で講義していて卒業生のその後を追ってみると、技術的な優劣は10年も経てばある程度緩和され、プロとして必要最低限身に着けるべき技術は誰にだって備わる気がする。
ただ、スタート段階でどんなに絵が上手くても続けていけない人間も存在する。

それはどう言うことなのか?

業界を去る人間は、絵を描く事がそれほど好きではない。
もしくは、アニメーターが描くような他人のデザインした絵を一日中、何枚も描く作業に苦痛を感じるのである。

技術的な能力と精神的な資質は必ずしも理想的な対に成っているとは限らない。

学習能力の高さや手先の器用さを評価し、そういう人間に技術指導することで専門学校や職業訓練施設は人材育成をしている気になっている。
しかし、本来才能とはそんな事では育たないのだ。

『技術があればやっていける!』とか『技術がないからやっていけない!』とか、そんな意識で人材育成を考えていると計画は頓挫する。
たしかに、技術力は大切なのだが10年くらいの長期スパンでみれば、続けていける人間には必然的に技術力は付いてくる。

最も重要な能力は、その仕事を続けていて苦痛でないかどうかだ。
1日中、机に向かって絵を描き続ける事、アニメの動きを想像してキャラクターに演技させる事を楽しめるか?
その素養が有るかどうかがアニメーターでやっていけるかどうかの才能であり、資質である。

その本質は、実は一般業種でも同様だ。

人と話をして接客し、自分が人に薦めたいと思う物の魅力を分析し、その良さを語ることが楽しいと思える人間は営業や接客に向いているだろうが、どんなに学習能力が高くても他人とコミニュケーションをとる事に苦痛を感じる人間は優れた職業訓練を受けて接客ノウハウを学んでも仕事としては続ける事が辛くなる。

逆に接客には向かなくても研究開発や製造業に向く人間も当然存在する。
それら全ての職業に関して求められる才能の本質とは、元来個々それぞれに備わっている精神的な資質によって決まる気がする。

私の高校の先輩後輩はおそらく全員がアニメの絵を描く事が好きだったのだと思う。
才能が有ったとすればその一転に尽きる。

しかし、「そんな事で誰もが監督に成れるのなら今頃アニメ業界は監督だらけだ!」そう思う人も居るだろう。

そこで重要になってっくるのが年齢が離れすぎていない、才能の有る先輩の存在なのだ。
1〜2年上の先輩がどんな事を考え、どんな仕事の仕方をして、どんな風に現状を成り立たせているのか?
その姿を見る事、知る事が、その下に続く後輩たちの指針になる。

たとえて言えば、満員電車に閉じ込められたまま、電車が緊急停止した状態で、車内アナウンスを受けられるか?受けられないか?
その違いと似た状態がアニメーターの新人に起きるのだ。

・電車が止まった原因。
・復旧の目処。
・今後の対応。

それらの情報が劣悪な環境の中で、的確に伝えられれば人は同じ状態でも耐えられるが、何も情報が入ってこないと不安だけが増して、現状から逃れる事ばかりを考えるようになる。

有り難いことに私の場合、二人の先輩が早い段階でアニメーターとして作画監督やキャラクターデザイナーになっていたので「先輩が何とか成っているのなら、自分も何とかなるだろう・・・」と確証の無い自信を心のどこかに持っていられた。

同時に10年、20年上の先輩たちにも恵まれていたと思う。

その辺りの話は次回にするとして、直近の先輩の話をまとめると最も運が良かったのは、わたなべ先輩が『スタジオライブ』からアニメーターを始めた事に尽きるかもしれない。

芦田さん率いるこのアニメスタジオ『スタジオライブ』は、スタッフの業界定着率80%を誇る会社だ。
離職率80〜90%(定着率20%以下)と言われるアニメ業界に有って、このスタジオの存在もまた特質すべきものがある。
監督、作画監督、キャラクターデザイナー,等々・・・このスタジオの出身者には有名なアニメの中核スタッフが数多く存在する。

『人材育成の環境づくり』

アニメーターのギャラの部分を置いておくと、その最も重要な人材育成の要素は技術的な内容も
含め、新人のメンタルコントロール手段に尽きると思う。

少し努力すれば到達できそうな上の立場の先輩の存在。
そしてさらにその上の先輩たちの存在。
その先輩たちが仕事に対して、どのように日々の訓練をして、仕事のステップアップをしているのかを聴く事、見る事、語りあう事。

それら全ての条件が整った環境造りこそ本来、人材育成に求められる重要な要素なのだと考える。
前回の続きで動画単価の話を少し。

前回『TVシリーズ作品1本あたりの動画単価値上げ分が50万円有ればアニメーターの新人は食えるようになる』そう書きましたが、実際にはアニメ作品全体の8割の動画と仕上げ(ペイント)の作業は中国や韓国をはじめとする東アジア諸国に出てしまっています。

その現状を考えると実は1本あたりの動画の値上げ分は10万円前後なのが実情です。
この金額さえ出せない・・・そんな話をするプロデューサーが居たら「あなたは無能だからプロデューサーは辞めなさい」と言うくらいの金額なのです。

現在の動画は仕上げの3〜4倍の手間がかかります。
仕上げ単価が200円と言うのなら、動画単価は600円。
そんな予算は取れないと言うのであれば、仕上げ100円に対して動画300円と言うのは、最低限譲歩した金額ではないでしょうか?

国内の動画上がりが無ければ、国内の仕上げの仕事も無くなるのです。
動画と仕上げの関係は切り離しようがない問題です。

そんな金額では国内に仕上げは撒けないと言うのなら、国内撒きする分だけいくらかの仕上げ単価を上乗せすればいい。

8割の海外分まで値段を上げろとは言っていないのだから・・・。

国内のアニメーター育成のために、なんとか新人が育つ土壌の整備をしましょうよ。

5月のシンポジュームから早3ヵ月。
その間、動画単価が上がったと言う話はほとんど耳にしない。

『国内アニメ産業の育成』そんなお題目を唱えるのなら、文部科学省は新人アニメーターが育つ、現場の土壌改良を行なうべきだ。

使えない動画マンに無理やり原画をやらせて、仕上げのギャラより安い作画監督料で、40歳過ぎのベテランアニメーターに全部描き直させてなんとか商品になるレベルまでクオリティーを上げる。
そんなアニメの作り方は、もう限界に来ています。

とにかく若い世代に元気で、優秀で、骨太なアニメーターが育つ土壌を作りませんか。
今の日本のアニメ業界で我々ベテランアニメーターが新人に水を与え続けるのは、もう不毛です。

荒れて痩せた土地では、どんなに優秀な種も芽吹きません。
たとえ芽吹いたとしても、水だけでは花も咲かないし、実も結ばない。
新芽が育つためには、肥料が必要なのです。
食って行けなければ、仕事にはならない。

平均的な動画マンが、人として食えるだけのギャラは出しませんか?
全制作作品の2割。
月給10万円以下。

国内の新人アニメーターが育つ土地は、規模が極端に小さく。金銭的には信じ難いほど貧しい。
これは産業構造的に起こっている問題ではない。
現場のトップがあまりに無策だから起こっている問題である。

文部科学省、厚生労働省、経済産業省の方々。
政権を獲られた民主党の議員の皆様。
国の予算なんか付けてくれなくて良いので、このふぬけた業界に行政指導してもらえませんかね。

117億円の金銭的な支援より、よほど業界が健全化します。
冗談ではなく・・・真面目にご検討ください。
前回、アニメーターの新人の惨状を書いたのでアニメ関係者が皆等しく貧乏なように誤解されているようだが、実はそれほど悲惨でもない・・・と言うのが私の実感だ。

というより、担当セクションによってキャリアや実績とは関係なく儲かるセクションとジリ貧なセクションが共存している・・・と言うのが現実なのだ。

ペイント(仕上げ)の単価を半分にすれば、動画マンは食っていけると書いたが、他にも予算をまわそうと思えばまわせる所はたくさんある。


こんな事をこういう場所で書くのは、本来「いかがなものか・・・?」と言う内容だが・・・アニメ業界の予算割に関しては当然知っているべき制作担当者すら実情を正確に理解していない現実があり。
その結果が業界の現状を悪化させていると私は考えている。

であるから・・・ここではあえて言おう。

「アニメ業界の多くのスタッフはちゃんと稼げている!!」
「そして、動画マンを救うのに必要な金は、制作費一千数百万円のTVシリーズ1話あたり、わずかに50万円なのだと」


200円の動画単価を300円に値上げするといくら足りないのか?
1話あたりの動画の平均的な使用枚数は4000枚〜5000枚である。
この数字からはじき出される、値上がり分の動画経費は1話あたり、わずか50万円。

この金額は本当に捻出できないのか?

そこで前回のペイント単価の引き下げ案を書いたのだが、他にもいろいろ予算の引っ張り所は有る気がする。


まず、私が解っている範囲で上げれば音響監督費。

TVシリーズの音響監督は平均15万〜18万円
同じ作品の監督料は20万〜25万円
作画監督は30万円前後である。

一見、この数字は妥当なように見えるが実際はまったく実状にあっていない。
前回書いたが、作画監督は上記の金額で1ヶ月半からそれ以上拘束され、月額20万円そこそこの稼ぎである。

監督に関しては、25〜26話(約半年間)のシリーズに関わると放映の半年前から準備に入るため、年間の平均収入に換算すると月額50万円前後である。

これに対し、音響監督は1話あたりに拘束される時間は仕込みの時間を入れても2日である。
したがって、音響監督は同時に2〜3タイトル掛け持っているケースが多い。
結果、1週間に3本。
1ヶ月に12本以上をこなす事もざらだ。
月産15万円×12本=180万円
年収2000万円以上稼いでいる音響監督がざらに居る。

シナリオライターに関しても、1本18万円前後で2〜3本掛け持っているのであるが、さすがに2日で決定稿が上がる事はまれなので、1〜2本を1ヶ月平均で上げると考えると原稿料として毎月稼ぐ金額は30万円前後だろう。
これが安いと思うか高いと思うかは、仕事の内容しだいだが、ヒット作品に恵まれるとライターには脚本印税が支払われ、不労所得が数百万円単位で支払われる。
毎月3タイトル以上の複数作品に関わっているのであるから、仕事があるライターはヒット作品にめぐり合う確率もそれなりに増える。
その結果、ちゃんと仕事が出来ているライターは年収1000万円位は稼ぎ出す。
もちろん、もっと稼いでいるライターも当然居るし、稼げていない人も居るだろう。

言える事は、作品のヒットしたり理由が必ずしも脚本の良し悪しとリンクしていないのも事実だと言うことである。


この他にも撮影はTVシリーズ1話に対して、80万〜100万円を割り振られている。
撮影は4〜5人くらいのチームで3日〜4日でTVシリーズ1本分の撮影をこなす。
この他に、線撮りと言う動画撮影や原画撮影、絵コンテ撮影などスケジュール管理さえしっかりしておけばやらなくて済む撮影作業が発生し、その作業も含めた予算が金額の中に含まれている。
なんにしても、結果的に4〜5人で月産400万円以上売り上げる。

上記に上げたそれぞれのセクションの売り上げが、他の産業の平均に対して高いか安いかと考えれば「まあ・・・年収2000万円くらい普通でしょう」と言えなくもない。
テレビ局や代理店の社員の給料はそんな物なのだから、アニメに関わっていてその金額を稼ぐことは別段おかしくはない。

だが、ことアニメの制作現場として考えた時にそれぞれの担当者がそれだけ作品に貢献しているのか?
そのセクションにそれだけ払う必要が有るのか?
その事をプロデューサーは考えるべきだと私は言いたい。

音響監督費は高すぎないか?
シナリオライターは印税を主張するのなら、最低原稿料の設定は本当に必要なのか?
シリーズ構成者の口利きだけで参加しているレベルの低いライターの原稿料は、もっと抑えてもよくはないか?
撮影のムダは制作管理の怠慢が原因で産み出されていないか?

ついでに言えば「作画監督は動画より悲惨だ!!」

私は自分で関わってみて本気でそう思う。

今アニメ業界で仕事をしていて、一番やりたくない仕事は作画監督だ。
出来が悪いと叩かれて、レイアウトや原画を全部描き直さなくてはならないのに、未熟な原画マンには1カット4000円。作画監督にはカット割すると1カット1000円にも満たないギャラしか払われない。
1枚単価に直すと安いと言われている動画単価より安いのだ。
ベテランでその作品の評価の半分近くを支えている作画監督は、作業内容とギャラがあまりに遊離している。

状況を勘違いしている音響監督が、自分はさも大変な事をやってやっているとでも言いた気に「原撮ばっかりで、まともな絵が無いから音が着けられないのよね」なんて事をしたり顔で言うのを聞くと私は「じゃあ、音響監督を降りてくれていいよ」と言いたくなる。
自分が受取っているギャラが作品全体のどれだけのウエートを占めているのか?
作画のスタッフがどんな思いをしてその映像を作り出しているのか?
あなた方は想像して、理解してものを言っているのか?

作品のメインスタッフは新人に憧れられる人間であるべきだ。
努力して頑張れば先輩たちのように成れる。
その思いが優秀な次世代を育てる。
だから、稼ぐことを悪いとは言わない。

しかし、しかしである。

新人のアニメーターはまともに生活さえ出来ないその横で、ペイントの新人が作画監督より稼げたり。
2日で終わる音響監督の仕事に15万円も払ったり。
撮らなくていい線撮作業を増やしたり。
工程作業のムダや予算配分の見直しで、たかだか50万円の動画料の値上げ分なんていくらだって捻出できるはずなのだ。

アニメ業界は30年間予算が変わっていないから・・・とか、動画料だけを上げるのは難しい・・・だとか、現状をよく理解もしないで解ったような事を口にするのは止めていただきたい。
ましてや「手塚が悪い!」とか言っている奴は解っていない以前に、頭が悪過ぎて話しに成っていない!

この問題は作品を代表している監督が声を大にして訴えるべき事だと私は思っている。

アニメ業界は決して貧しくなどない。
アニメーターが貧しいだけなのだ。


その現実を業界関係者は正しく理解し!
改善を行なう勇気を持って欲しい!

フォローしておくが、頭が下がるほどちゃんとした仕事をしてくれる音響監督やシナリオライターも居る。

だが、それでも音響監督費は高い・・・と思う。
(自分でもやっていながら、こう言ってしまってはなんなのだが・・・)

と言うか・・・「予算配分が明らかにおかしい!!」・・・と、なぜ動画協会に加盟している製作&制作会社のプロデューサーは思わないのか?

この状態を放置すると、本当に作品が作れなくなっていくことが想像出来ないのか?

作画監督の所で作業が滞るのは、まともな仕事が出来る原画マンの数が急速に減って来ているからであって・・・。
その原因を作り出しているのは、立場的にギャラの交渉が出来ない新人のアニメーターへの、制作管理者の気配りの無さが現状を生み出している。

それは間違いのない事実だと思う。
2009年5月22日
『アニメーター実態調査シンポジウム2009』を無事に一つの形として纏められた事は素晴らしい事だと思う。

当日、深夜に伝えられたNHKの『ニュース』は国内の一般の方たちにも、海外のアニメファンにもショッキングだったようだが・・・。

しかし、このシンポジュームと報道で語られた内容だけでは、本当の意味で現在のアニメ業界で起こっている事は理解できない。

そこで、ここでは事実を並べ、アニメ業界の現状を解りやすく解説することにしよう。

まず、アニメ産業全体が貧しいわけでない事は、多くの作品が世界で大きなコンテンツとして認知され、数十兆円規模の市場に成っている事を考えれば、想像に難くないだろう。

ではなぜ、制作現場のアニメーターがこれ程までに貧しいのか?

それには当然理由がある。

よく言われるのは「代理店やTV局が中間搾取しすぎているからだ・・・」と言う部分であるが、たしかにここも大きな問題かもしれない。

しかし、私の立場でこの部分の実状は正確に把握出来ていないので、解ったような事を書くのは避けておく。
遠くない時期に公正取引委員会等が、実態の洗い出しと行政的な指導を行なうと言う噂は聞いているので、今はその展開を見守りたい。

では、振り返って制作現場の現状を検証しよう。

まず、話題になった動画担当の新人アニメーターの実態である』

今回シンポジュームでも発表されたようにデジタル化して以後の動画マンの平均月産枚数は約500枚平均である。
これに対する単価設定は200〜250円なので、月額10万円〜12万円で源泉税1割を引かれた手取りは約9万円〜10万円になる。
ここから年金や健康保険料、家賃、食費を捻出する。
東京の家賃は5万〜7万円である事を考えれば、到底まともな生活はできない。

これに対して、同じ新人のペイント(仕上げ)はどうか?
ペイント担当者1人の平均月産枚数は約2000枚である。
これに対する単価設定は180〜200円なので、月額36万円〜40万円で源泉税1割を引かれた手取りは約32万円〜36万円となる。

この金額の差はなぜ起こっているのか?

それは、この単価設定がセルアニメのアナログ時代に決められた物がそのままスライドした事にある。

かつてセルのペイント作業は、絵の具の乾き待ちや影の色トレス等、動画と同じように熟練の技術と手間隙が掛かったため、担当者1人の月産枚数は約700〜1000枚前後だったのだ。

当時、動画もほぼ同様の枚数を処理できた。

だから、20年前の動画マンであるベテランアニメーターたちは「俺たちの頃は皆、1000枚くらい書いていた」と言うような話を、良く解りもしないで口にする。
だが、当時の動画はトレスマシンの性質上、鉛筆の実線以外は色鉛筆の色を写し取らなかったために、一発描きと言う色鉛筆の下書きをアタリで取って、そのままクリンナップする事もできたし、実線が厳密につながっていなくてもハンドペイントだったために、色が実線からはみ出して流れ出す事も考えなくて良かったのだ。

影色も裏から塗る必要も無く、現在のデジタルペイント用の動画と比べれば、そう言った意味で手間隙が非常に軽減されていた。
その事を理解せずに、過去の単価設定をスライドしている事が、現在の新人アニメーターの生活を困窮させている理由なのだ。

そして、同時にスケジュールの破綻を招く原因もつくっている。


『上記のような状態が、すでに10年以上続いた結果、アニメ業界で今なにが起こっているのか』

現在アニメ業界において、まともな原画が描ける若い人材が極端に減って来ている。
その最大の原因は、新人の過酷な労働環境に起因している。
多くのアニメ会社が新人を入れる時に「自宅から通えるか?」「親からの仕送りはあるか?」を聞く。
最低限、その条件がクリアーされないと新人アニメーターは生活出来ないからだ。

この最初のフィルターリングで、アニメの仕事を職業にしたいと思っている優秀な人材の多くが振り落とされ、月収5〜6万円でやっていける人材だけが、業界に入ってくる。
この中にはまだやる気が有って技術もある若者もわずかに残っているが、少なくない数の趣味人も存在するのだ。
仕事としてアニメに関わらなくてもいい人材。
趣味のようにアニメの絵を描いていられるスタッフが毎年大量に入ってくる。

かつてアニメーターの多くは才能が無いから止めていった。

だが、現在は頭が良くて技術力のある者から業界を去っていく。
もちろん全員が全員、そうだとは言わない。
中には苦しい生活の中で必死にアニメーターを職業にしようと頑張っている後輩たちもいる。
だか、そんな真面目で一生懸命な人の隣でダラダラ遊びのように絵を描き、同人本を作り、仕事中にゲームをやったり、アニメや漫画を見てまともに仕事をしない趣味人なアニメーターが共存しているのだ。
彼らは月額2〜3万円のお小遣いが稼げれば、悠々自適に生活できる。

その姿を観て、やる気のある頭のいい新人はこの業界を去っていく。

学生時代に自分よりも技術力の無かった友達がゲーム業界等で活躍し、月収30万円くらい稼いでいる事を知っているから、こんな馬鹿げたアニメ業界で潰れたら馬鹿馬鹿しいと思うのだ。

その結果、優秀なアニメーターの人材が枯渇していく。

10年もその状態が続いているのだ。
優秀な原画マンが出てくる確率は極端に減っている。
現在、日本のアニメ作品を支えている代表的な監督や作画監督、デザイナー、そして優秀な原画マンは40代〜50代に集中している。
そのほとんどは、すでに20代で監督や作画監督、デザイナーとして活躍していた。

その層がいまだにアニメ業界を支えているのだ。
そして年々、このスタッフに掛かる付加が増えて来ている。
育ってくるべき優秀な原画マンの数が驚くほど減ってしまったからだ。
レイアウトも描けない。
原画もタイムシートもまともに描けない。
だから、演出や作画監督が全部描き直さないとまともな絵にならない。
仕方ないので、ベテランが全てのラフ原画を描いて新人のアニメーターがクリンナップだけをする。
それを第二原画などという言い方をするので、原画マンになったと思ってしまうのだが、20年前はそれは原画トレスと言って動画の仕事だったのだ。

今、仕上げや撮影、音響のスタッフが「監督や作画監督が仕事を抱えてチェック作業を遅らせるから、自分たちに時間が無くなって大変迷惑をしている」といった不満をよく口にするのを聞く。
だか、この段階で絵を描き直さないと惨憺たる映像が出来上がってしまうのだ。
そして、それによって「作画崩壊!」とか「出来が悪い!」と叩かれるのは監督であり。作画監督である。

クライアントからの評価もここに集中する。

出来の悪い作品を作ったら、監督も作画監督も次の仕事が非常に取りづらくなる。
しかし、まともな原画マンは育ってこない。
仕方なく、監督や演出や作画監督が寝る時間を削って絵を書き直すのだ。

作画監督の1本の単価は約30万円。
平均して作画INしてUPするまでに1ヵ月半。
月額20万円そこそこである。
業界歴20数年のベテランアニメーターがである。

その同じ職場で、ペイントの新人が毎月30万〜40万円稼いでいる。

制作会社のプロデューサーは、この現状を解っていながら放置している。
問題を解決するためには、1社だけが予算配分を変えてもどうにもならないからだ。

動画の新人がなんとかまともに生活するのに必要な金額は最低15万円だ。
これを月産枚数500枚で割ると最低単価は1枚300円になる。

動画とペイントを合わせた単価は現在400円〜450円。

その内300円を動画に振り分け、残り100円をペイントに振った場合、ペイント担当者の収入はいくらになるのか?
月産2000枚×100円=20万円である。

「この予算配分の見直しがなぜ出来ないのか?」

制作会社の統括機関である動画協会の調整機能が正常に働く事を切実に望む。

改革の始まり

カテゴリ : 
アニメ監督ひねもす日記
執筆 : 
ヤマサキオサム 2009-4-8 15:58
2009年4月6日午後、ワオワールドの会議室に日本のアニメ業界を代表する数社のプロデューサー総勢十数名が集まり今後のアニメ業界のあり方について非公式な会合を開いた。

実際の参加者はまだ非公式な会であり、これによってどこまで業界の改革が進むかが未知数なため、今は伏せておく。

ただ、場所を提供したワオの関係者として、そしてJAniCaの発起人の一人として、また専門学校で学生たちを指導している講師の立場としても、この会合がこれからの日本のアニメ業界の大きな改革の一歩となることを切に望んでいる。

そもそも、この会合の切っ掛けになったのはもう何年も前から、各社のプロデューサーに会うたびに私が訴えていた、新人動画マンの経済的な惨状が結果的にアニメ業界全体の技術体力の低下につながっているとの思いに、志の高い各社の代表プロデューサー諸氏が賛同してくださったからだと感じている。

特に今回の会合を仕切り、非公式ながらも意見交換の場を纏めてくださったジーベックの下地社長は大変ご苦労だった事だろうと頭の下がる思いである。

以下、その時に配布された会合の趣旨書を下地社長の了解を得たので紹介する。

この後、数枚のジーベックなりの改善案が書かれた文章が続くのであるが、その内容は各社の立場や意見の纏めこみの必要性を考慮し、今は伏せておく。

何にしても日本のアニメが2D作品を中心に今後も作品作りを行なっていくのであれば、アニメーターの・・・特に新人アニメーターに優秀な人材の確保を行なう必要が有る。

そのための雇用体形の改善は、一刻も早く行なうべきだと思う。

アニメ業界は今、自助努力でなんとか状況の改善を図ろうとしているが、関連各社の立場の違いや動画協会に所属する出版、音楽、玩具、等の制作現場でないスポンサー各社との力関係のアンバランスな状態のために、本質的な改善が大変難しい状態である。

アニメ産業育成のためには制作の予算配分に関して、国や都の行政機関は現状を正確に把握し行政指導の形で、トップダウンの流れを早急に作る事が最も望ましいと私は感じている。

現在、アニメ業界は同じ作品に関わりながら、年収数千万円を稼ぐ人間と百万円前後しか稼げない人間が共存している。

それが、技術力やキャリア、作品への貢献度の違いで発生しているのであれば仕方のない問題なのだが、現状はそうではない。
シナリオ、演出、作画、ペイント、美術、撮影、編集、音響、等の担当セクションの違いによって、不当に儲かる仕事とジリ貧を強要される仕事が存在するのだ。

この状態を放置すると作品制作の根幹が崩れ業界自体が瓦解する危機的状況である事を我々は意識と行動のレベルで理解しておく必要が有る。

一人では・・・一社ではどうにもならない問題ではあるが、これから先の業界の発展を望むのであれば、是非関係する全ての人間が真剣にこの問題に取り組んでもらいたい。

JAniCAがその一翼でも担えれば、発起人として参加した甲斐があると思っている。