日中戦争で第六師団(熊本市)の騎兵第六連隊伍長を務め、1939年に戦死した牧野信人さん(当時30歳)の遺品から、南京戦での捕虜殺害の記述が見つかった。長男の牧野久仁博さん(77)=熊本市植木町山本=が7日、公表した。
遺品は従軍手帳と手紙。従軍手帳には、亡くなる前日までの行動が1日数行ずつ記録されていた。このうち、南京城が陥落した1937年12月13日からの記述に「十二月十三日 綿花地ノ戦斗参加 南京陥落ス 十二月十四日 村上少尉ト斥候トナル(約三百捕領ス 全部殺ス)」と、捕虜を殺害した部分があった。
資料を研究している熊本近代史研究会長の小松裕熊本大教授は「南京大虐殺に関し証言は多く出ているが、手帳という第1次資料で記述があるのは非常に珍しい」としている。
従軍手帳は牧野さん方の仏壇に飾られ、牧野さんもたびたび開いていたが、捕虜殺害の記述を意識することはなかったという。牧野さんは「純朴な青年が、戦争では相手も知らず人殺しをさせられているのだということが、恐怖の中から伝わってくる」と話した。【結城かほる】
毎日新聞 2010年12月8日 地方版