道南
方言のルーツ調べ冊子に 松前
(12/10 14:54)
調査結果をまとめた冊子を手にする松尾さん
【松前】「のっこり」「かんづける」…。江戸時代の道内政治経済の中心だった松前で使われてきた方言が、道外のどこで使われているか。そんな疑問を解こうと松前町在住の松尾祐三さん(67)が調査を行った。結果は、松前ことばとの関連度が最も高いのは青森・下北地方で、岩手県宮古市も強いつながりを持っていたことなどを示している。(久田徳二)
前副町長の松尾さんは、在職中から「おまはん」など近江地方(滋賀県)の言葉が松前にあることなどに興味を持っていた。退職後の今年8月、本格調査に着手した。
まずは専門書や聞き取りなどで松前の代表的な日常言葉500語を選定。町内の墓石や過去帳から、婚姻などで松前と関係深い人が多い青森、秋田など6県の計15市町村(表)を調査対象に選んだ。
副町長時代の人脈を生かし、15自治体の首長または郷土史家に、500語が現在と過去に使われているか否かの調査を依頼した。
その結果、例えば「あくど(かかと)」「んだ(そうです)」など、多くの言葉が東北の12市町村で共通して使われていた。
一方、「けったぐり(けりあげる)」は津軽しか使われておらず、「どんぶす(眠る)」は下北、「なんだ(おまえたち)」は秋田、「だけだけに(相応に)」は石川だけで使われていた。
各地方の関連度(松前ことばが使われる度合い)を比較すると表のように、下北が85・8%で最も高く、次いで津軽が78%、秋田が61・2%、岩手が56・8%だった。
町教委の前田正憲学芸員は「たんねんに調べ、数値化もしている。大変な努力だったのでは」と調査を評価している。
松尾さんは「松前は津軽と秋田との共通語が多いと思っていた。下北が最も多いのは意外だった」と振り返り、背景について「『松前稼ぎ』(松前への出稼ぎ)が下北で盛んだったことが影響しているのでは」と話す。
また岩手・宮古市が高い関連度を示したことについては「宮古市は下北と同様、南部藩の一角で『松前稼ぎ』が多かった。同時に近江商人がいたことも要因では」と推測する。
調査結果は冊子「松前町『ふるさとことば(方言)』道外市町村関連度調査」にまとめた。A4判28ページで30部発行。松前町立図書館に1冊置かれている。