石井町で10月、体が不自由な妻を、同意を得て殺害したとして、承諾殺人罪に問われた同町高川原、運送会社契約社員、武知秀明被告(57)に対する初公判が9日、徳島地裁(佐藤晋一郎裁判長)であり、武知被告は起訴内容を認めた。検察側は懲役5年を求刑し、即日結審した。判決は来年1月13日。
検察側は論告で、当時、被害者が生命の危険が差し迫った状況ではなかったことを明らかにし、「被告と笑顔で生活できる道もあり、結果は重大。パチンコなど自己の遊興費にも使うなど身勝手で短絡的」と指弾した。
弁護側は、被告が献身的な介護をしていたことに触れ、執行猶予付きの判決を求めた。
起訴状によると、借金で生活に困り、将来を悲観して妻(当時57歳)と心中することを決め、就寝中の妻の承諾を得て、10月1日、自宅で殺害したとしている。
初公判で、武知被告は「本当にすまないと思う。今後の人生で妻の供養をしていきたい」と、殺害した妻への思いや生活状況などについて声を震わせながら胸中を語った。
検察側の冒頭陳述などによると、事件に先立つ9月中旬ごろ、被告の自殺を察した妻から「先にいこうと思っているんちゃうん」と言われ、妻と心中を相談したという。被告は妻を殺害後、睡眠薬を服用するなど、自殺も図ろうとしていた。被告は「(妻が)僕のところへ来なければ、病気にもならなかった」と自らを責めた。
被告には、地元住民ら1400人余りから「地域で被告を支える」などとして、刑の減軽を求める嘆願書も出ているという。【山本健太】
毎日新聞 2010年12月10日 地方版