躍進の陰に名指揮官 就任3年目の久慈東・石橋監督 |
2008.6.11 |
12日に山形県で開幕する春季高校野球東北大会に初出場する久慈東は、石橋智監督(47)が進める「一流志向」のチーム改革が実を結んだ。かつて秋田工を指導2年目で夏の甲子園に導き、北東北大学野球リーグの青森大を常勝チームに育て上げ全国大会9度出場を遂げた名指揮官。県教委スポーツ特別教員の野球分野第1号の石橋監督が、就任3年目で「結果」を出した。
春季県大会で昨秋覇者の盛岡四、東北大会4強の盛岡大附を撃破した快進撃は、まぐれではない。
久慈東がこれまで練習試合した相手は、仙台育英(宮城)、浦和学院(埼玉)、京都外大西(京都)など甲子園常連校が並ぶ。全国に名が知れた石橋監督だからこそ組めるカード。狙いは「試合や練習中の強豪校の姿勢を学び、勝つことへの執着心とミスへの厳しさを学ばせること」にある。
昨秋は東京六大学野球観戦ツアーも行った。指導理念には「一流のプレーを見なくては上達しない」がある。
監督就任1年目、初采配(さいはい)の春季地区大会で終盤八回、7点リードから逆転負けしても「健闘ムード」が漂うチームに「何が何でも勝ちたいと思わないのか」と怒りに似た感情がわいた。
2006年の関東遠征では桐光学園(神奈川)に0―10。当時1年生で先発した主戦中村智哉(3年)は「一死も取れずに降板した」と振り返る。
強豪校との対戦が着実に意識改革を起こした。下斗米正士(3年)の父で父母会長の正彦さん(44)は「選手たちに、もっとうまくなりたいという欲が出てきた」と変化を喜ぶ。父母会も一致団結し、遠征のバス送迎からブルペンを覆うネットの建設など、支援態勢を強化した。
今年3月の遠征は智弁学園(奈良)に0―1、昨夏甲子園出場の金光大阪(大阪)には5―2で勝った。正路卓麻主将(3年)が「名前負けすることはない。自分たちの力を出せば結果を出せる」と語るように自信が芽生えた。
サッカー部、陸上部とかち合うグラウンドでは無理に全体練習をせず、ポジションごとに守備、打撃、バントなど部分練習で個々の技術を磨いた。
春季県大会は出場チーム最多の15犠打を記録するなど確実なプレーが身に付いた。グラウンド外に整備した6つのブルペンには野手兼任を含む15人の投手が交代で入り、熱の入った投球練習をする。
石橋監督は教員採用面接で「これまでの人脈を生かして強豪校と対戦する」と公言したという。「私立校の実力が拮抗(きっこう)する岩手なら、公立校でも甲子園出場の夢を見られる」。もう一度、高校球児と一緒に甲子園の夢を追いかけたくて本県を選んだ。
久慈東のメンバーは全員が地元出身。「おれを信じてついてこい」と語る監督を見つめる選手の目は真っすぐだ。
【石橋 智(いしばし・さとし)】 秋田県大仙市出身。大曲高から法大に進み、第42回選手権大会、第33回選抜大会で春夏連覇した法政二(神奈川)を率いた田丸仁監督の下で指導法を学んだ。卒業後は秋田工(秋田)を就任2年目(当時史上最年少25歳)で甲子園に導き、青森大では9度の全国大会出場。青森山田中監督を経て05年から久慈東高教諭、翌年からチームを率いる。47歳。八戸市在住。
【写真=初出場の東北大会に向けて、選手を鼓舞する石橋智監督(右から2人目)=久慈東高グラウンド】
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