【社説】北朝鮮をかばえば中国の世界戦略は空転する
中国が世界経済でますます確固たる地位を占めた今年、国際舞台ではむしろ中国の立場が狭まったような気がする。中国の人権運動家、劉暁波氏のノーベル平和賞授賞式に他国が出席することを露骨に非難し、隣国との領海・領土紛争でもあからさまに国力を行使しようとした結果、中国の将来に対する周辺国の不安を高めてしまった。
中国の立場を危うくした代表的なケースが北朝鮮問題だ。北朝鮮が韓国海軍の哨戒艦「天安」を爆沈しただけでなく、延坪島の民間人にまで砲弾を浴びせると、オバマ米大統領は中国の胡錦濤国家主席に電話をかけ、「中国は米国などと歩調を合わせ、北朝鮮に『挑発行為は容認できない』という明確なメッセージを伝えるべきだ」と求めた。世界各国も共同歩調を取った。ロシアも最近、「中国が乗り出すべきだ」と表明している。
中国の程永華駐日大使は9日、日本のメディアのインタビューで、「北朝鮮で何かが起きれば、責任を中国になすりつける。意見があるならば、直接北朝鮮と対話した方がよい」と述べた。ベル元在韓米軍司令官が「韓半島(朝鮮半島)で戦争が起き、中国が参戦することになれば、中国は100年前に逆戻りする」と述べたことについて、中国人民解放軍の彭光謙少将は「中国が100年後退するならば、相手は200年後退する」と興奮して語った。
中国が過敏な反応を示すのは、韓米両国が西海(黄海)で機動演習を行っているためだとの指摘もある。しかし、中国が北朝鮮に天安爆沈事件や延坪島砲撃の責任を認めさせ、再びそうした行動を取らないようにくぎを刺していれば、状況がこれほど悪化することはなかったはずだ。中国は自身がなすべきことをせず、「韓半島の戦争」という絶対に起きてはならない仮想シナリオで勝手に興奮している格好だ。
中国は2003年から7年近くにわたり、6カ国協議のホスト国を務めてきた。参加国の中で、北朝鮮に石油とコメという生存に必要な物資を提供している国は中国しかない。それでも中国は北朝鮮が核を開発しようが、ミサイルを撃とうが、民間人を殺傷しようが、「内政不干渉」という言葉ばかり繰り返している。北朝鮮の核兵器が中東やテロ組織に流れれば、当面は米国が最初の攻撃目標となろうが、核・テロの次の標的は少数民族紛争が絶えない中国かもしれない。それでも中国は米国とのアジア太平洋時代の主導権争い、そして、中国以外に北朝鮮を動かせる国がほかにあるのかといった存在誇示のために、北朝鮮問題を利用することばかり考えている。
中国が北朝鮮をかばい続け、国際社会とは正反対の道を歩むならば、中国の世界戦略は空転せざるを得ない。中国は現在訪朝している戴秉国・国務委員を通じ、中国の世界戦略と国益という観点から、これまでのように一方的に北朝鮮をかばうのは難しいとの立場を伝えてしかるべきだ。