【萬物相】孔子平和賞

 孔子の弟子、子路は「人々に多くのものを施し、人々の暮らしがよくなるように手助けすれば、それを仁と呼べるのか」と尋ねた。孔子は「どうして仁と言えようか。それは聖と呼ぶべきだ。尭や舜の皇帝にもそれは難しかっただろう」と答えた。朝鮮後期の実学者、丁若鏞(チョン・ヤギョン)をはじめ、多くの論語研究者は、「仁」を人間に対する愛、「聖」を人間らしく生きる世の中の原理と解釈してきた。そして最近は、仁に基づき、聖を広げることが孔子の平和思想だとの見方もある。

 中国政府は2005年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と共同で孔子文化祭を開催し、孔子の思想を見直すことに力を入れた。こうした動きに合わせ、文化大革命当時、紅衛兵が破壊した孔子像も各地に再び復活した。胡錦濤国家主席はチョウ・ユンファ(張潤発)主演の映画『孔子』の封切りを前に制作陣と会い、「孔子の思想と偉大な業績を再び世界にアピールする良い契機になる」と激励した。

 先月17日付の中国紙・環球時報は、反体制運動家の劉暁波氏にノーベル平和賞授与を決めたノーベル賞委員会を批判し、「中国の平和観と人権概念を世界に知ってもらうため、孔子平和賞を制定しよう」と呼び掛けた。10日に行われるノーベル賞授賞式を控え、孔子平和賞委員会は初の受賞者に台湾の政治家、連戦元副総統を選出し、授賞式が9日、北京で行われた。だが、当の連戦氏は欠席し、身元も分からない少女にトロフィーが手渡された。ニューヨーク・タイムズは、このニュースについて「孔子平和賞委員会の正体はミステリーだ」と報じた。

 孔子平和賞委員会は、最終候補としてカーター元米大統領、マンデラ元南アフリカ共和国大統領、米実業家のビル・ゲイツ氏の名前も挙がったと説明した。同委は中国文化省と密接に協力しているが、政府機関ではないという。中国政府は7日、「これまでに100カ国以上が劉暁波氏のノーベル平和賞受賞に反対する中国の立場を支持した」と発表した。ノーベル賞委員会によると、授賞式には44カ国が出席し、19カ国が欠席するとのことだ。

 胡錦濤国家主席が先月、フランスを訪問して大歓迎を受けた際、有力紙ル・モンドは社説で「中国が欧州の国に対しノーベル平和賞授賞式への欠席を迫るのは、『中華帝国の主人』にとって名誉なことではない」と皮肉った。「君子は周して比せず、小人は比して周せず」という孔子の言葉が思い浮かぶ。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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