2010年12月10日5時1分
「0.07秒」の電圧低下が、日本のものづくりを揺るがしている。8日早朝、中部電力管内で電圧が一瞬低下。東芝の半導体製造の主力である四日市工場が一部操業を停止した。コスモ石油四日市製油所も操業を停止したままだ。高い品質の電力に頼る日本の製造現場のもろさを露呈した。
東芝四日市工場は、電源を切っても記録データが保たれる「NAND型フラッシュメモリー」を生産している。パソコン用のメモリーカードやスマートフォン(多機能携帯電話)、デジタルカメラ向けの需要が急増し、フル操業を続けるなかで事態は起きた。
半導体工場は精密な製造装置が多く、電圧の安定した質の高い電気が欠かせない。このため、落雷などで電圧が変動した影響を製造装置に伝えないように「UPS」(無停電電源装置)を備えるのが一般的だ。
東芝によると、四日市工場も主な製造装置にUPSを付けていたが、製造装置のあるクリーンルームの空調設備が停止。電圧低下の落ち幅や時間が想定よりも大きく、対応しきれなかったという。
半導体製造では、ほこり一つない状態が必要だ。いったん止まると設備の洗浄や製造途中の半製品の撤去、設備の点検を経ないと、再開できない。
東芝は現在、設備が正常に動くか確認中で「7割程度が復旧し、10日には通常通りの操業に戻る見通し」。ただ、来年1〜2月の出荷量は最大2割減る恐れがあるという。同社は1〜3月のフラッシュメモリーの売上高を約1700億円と予想。単純計算では2割減ると月額100億円程度の減収になるとみられ、業績への影響も懸念される。
コスモ石油四日市製油所では、電圧低下の影響で停電が3時間弱続いた。自家発電設備は平時から動いており、非常時には完全に切り替わるはずが、この電源まで止まった。原因を調査中だ。