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裁判員の「思い」感じた

タンク殺人10回の審理傍聴

 米原市で昨年6月、交際相手の会社員小川典子さん(当時28歳)を殺害したとして、殺人罪に問われた森田繁成被告(41)に懲役17年を言い渡した裁判員裁判。地裁で10回に及んだ審理の間、傍聴席で裁判員の質問に耳を傾け、表情やしぐさを追い、彼らの判断に思いを巡らせた。

 「私は殺していません」。森田被告の言葉で、無実を訴える人を裁くという難しい裁判が始まった。被告は表情を変えず、本心が見えなかった。「これは厄介だ」と思ったが、裁判員の質問を聞く間に、それが杞憂(きゆう)だと感じ始めた。

 女性裁判員の一人が「交際相手が殺された気持ちは」と問い、被告が答える間、その心の奥底を探ろうとするような視線で、被告の顔を見つめ続けた。

 結審後、判決日の朝まで評議して出した結論には、自らの感覚で被告の有罪を確信した裁判員の意見が多く取り入れられた。裁判長が判決文を読み上げる間、裁判員は被告を見つめ、手元の判決文を確認した。自分たちの「思い」を受け止めてほしい、というような表情に見えた。

 判決には「罪に背を向けようとし続ける被告人に、その責任に直面させる必要がある」という彼らの〈思い〉が盛り込まれていた。

(鷲尾龍一)

2010年12月4日  読売新聞)
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