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【諫干訴訟高裁判決・連載】開門の行方(下) | ||
◆上告せず政治決断を 漁業者ら国へ要請 一審佐賀地裁に続き再び開門を命じた福岡高裁判決から一夜明けた7日、事態は動き出した。
「どんな条件整備が必要か早急に検討する」。仙谷由人官房長官が午前の会見で、開門調査に前向きな姿勢を示した。
「上告断念」「早期開門」を求め、朝から東京の農水省前で座り込みを行った漁業者や弁護団。午後は永田町で民主や自民をはじめとする各党議員が参加した集会を開催するなど終日、慌ただしく関係先を回った。
各集会の合間の夕方、官房長官発言を伝え聞いた佐賀県藤津郡太良町のタイラギ漁業者平方宣清さん(58)は「開門に触れることは当然」とした上で、上告にも含みを持たせたことに関し「上告するなら開門時期が遅れる。漁業者はもう一刻も待てない」と語気を強めた。
弁護団の馬奈木(まなき)昭雄団長も、民主党議員の集会で「国が理不尽な対応を取るようならわれわれは一歩も引かない。4次、5次提訴でも勝訴を取り続ける」と農水省の担当職員に迫り、8年に及ぶ法廷闘争で2度にわたって「開門」を勝ち取った実績を盾に攻勢をかける。
来年3月には長崎地裁でも開門を求めた訴訟の判決を控える。馬奈木団長は「判決と政治判断が別ならとんでもない話。どう転ぼうと、どこかの時点で決断せざるを得ない」と、国の退路を断つように畳みかけた。
一般質問が行われていた佐賀県議会。取材に応じた古川康佐賀県知事は官房長官の発言に「これまでの経緯を重く受け止めていただいていることだと思う」と期待をにじませた。
古川知事も国に上告断念、早期開門を求めつつ、「政府の真意を確かめたい」と、留守茂幸県議会議長、川崎守県有明海漁協組合長らとともに8日に上京し、官邸や鹿野道彦農相に働きかける。
焦点は官邸に移る。
原告弁護団からは、野党時代に「無駄な公共事業の象徴」として批判し続けた菅直人首相の決断を求める声が上がる。佐賀や福岡、熊本の民主党開門派議員も「上告せずに開門調査の実施」を求める声明を発表。決断を促す働きかけを強める。
そして7日夜。菅首相が報道陣に「私にとっても長く取り組んできた問題。政府でしっかり対応していく」と語った。これまで沈黙を守ってきた首相が、動き出した。 |
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2010年12月08日更新 |