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菅直人首相は8日、民主党の小沢一郎元代表の国会招致問題で、衆院政治倫理審査会への招致議決も視野に党内調整するよう岡田克也幹事長に指示した。1月召集の通常国会を乗り切るには小沢氏の国会招致に前向きな姿勢を示すことが必要と判断した。これに対し、小沢氏に近い党幹部は8日、参院で問責決議が可決された仙谷由人官房長官を更迭し、内閣改造を断行すべきだとの考えを表明。11年度予算編成をめぐる財源問題の迷走など閉塞(へいそく)感が強まる中、沈静化していた党内抗争が一気に再燃した。【高山祐、葛西大博】
「幹事長の方で、そういったことも含め、党で議論してもらう」。菅首相は8日夕、小沢氏の政倫審への招致議決について記者団に前向きな姿勢を示した。これに先立ち首相は岡田氏に党内の意見集約を急ぐよう指示。仙谷氏も会見で「政倫審での説明は重要だ」と述べ、通常国会前の実施を示唆した。
招致議決案は12日投開票の茨城県議選を控え、危機感を強める岡田氏が主導した。政倫審(25人)は委員の3分の1の申し立てと過半数の賛成で開催できる。委員長を含め17人の民主党が決めれば自動的に開催が決まる。
ただ、議決されても強制力はなく、小沢氏は出席しないとみられるが、党方針決定を経て議決すれば、出席しない場合に処分対象とすることもできる。
首相に近い党幹部は「小沢氏は地方選が厳しい、と批判するが、自分こそがマイナス要因だと分かっているのか」と息巻く。仙谷氏交代論に対し、仙谷氏は「私に辞任を要求してきた人はいない」と一蹴。首相も内閣改造論を退けた。
「協力しようと思っても、首相は私たちを切って政権浮揚しようとしているので協力しようがない」
8日夜、小沢氏は鳩山由紀夫前首相、舛添要一・新党改革代表、鳩山邦夫元総務相と東京都内で会談し、鳩山前首相が痛烈な首相批判を展開した。
招致議決の動きを封じようと小沢氏系議員は猛然と抵抗した。7日には輿石東参院議員会長が岡田氏の要請を「必要ない」と拒否。仙谷氏交代を求める党幹部は8日昼、「小沢氏を国会招致しようとすれば菅政権は吹っ飛ぶ」とけん制した。
同日午後には森ゆうこ、谷亮子両氏ら参院議員9人が党本部で岡田氏に抗議。「8割の人が小沢氏招致が必要と言っている」という岡田氏に、森氏らは反論、激論になった。
ただ、小沢氏は「政治とカネ」問題で強制起訴を控え、離党を迫られる危機感もある。舛添氏らとの会合は「第三極新党」など政界再編を模索する動きとの見方もある。
「傾聴します」。自民党の谷垣禎一総裁は8日、党本部を訪れた渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長と会談。渡辺氏といえば3年前の福田政権当時、自民、民主両党による大連立構想にかかわった。
関係者によると、渡辺氏は民主党との大連立を働きかけたが、谷垣氏は慎重姿勢を崩さなかったという。一方、自民党の森喜朗元首相が8日、菅首相を官邸に訪ねた。森氏も07年の大連立構想のキーマン。周辺からは「2人の動きは偶然か」といぶかる声が上がる。
毎日新聞 2010年12月9日 東京朝刊