大阪屈指の電気街、日本橋。
現在この街では、ある機器が違法に販売されているという。
<マル調>
「あっ看板が出ていますね。『マジコン』と書いてあります」
「ここにも看板がありますね」
「マジックコンピュータ」、通称「マジコン」。

<中学生>
「もう今はみんな持ってるんじゃないですか」
<高校生>
「無料なんでそっちにいっちゃいますね」
<中学生>
「パソコンから入れるんっすよ。インターネットの色んなサイトから」
携帯ゲーム機、「ニンテンドーDS」のソフトとして使用される「マジコン」。
ネットから違法にダウンロードしたゲームが、簡単に遊べることが問題となっている。
「マル調」が確認できただけで、現在、日本橋では「DSTT」や「R4」と名前の付いた「マジコン」が、5つの店で販売されている。
中には、堂々と路面で売る店も…
果たしてこれは違法行為なのか?
<コンピュータソフトウェア著作権協会 中村文憲さん>
「違法です、もちろん違法です。訴えられようが訴えられまいが、やっている行為は違法なんです。日本国内におけるゲームの違法アップロード、違法ダウンロードによる被害は9,600億円ぐらい。全世界では3兆円ちょいの被害があります」
「マジコン」を使った違法コピーの仕組みはこうだ。
まず、違法サイトから欲しいゲームを無料でダウンロードし、マイクロSDにデータをコピーする。

そして、そのデータをマジコンで起動させると、「ニンテンドーDS」のゲームソフトとして遊ぶことができるという。
<中学生>
「買った。友達から」
<マル調>
「いくらで?」
<中学生>
「1,200円で」
<マル調>
「親とかは知らないの?」
<中学生>
「知ってる。金かからないから何も言われへん」
<マル調>
「何個ぐらいゲーム入れてるの?」
<中学生>
「40個ぐらいありますね。これは『ポケモン』! 1個のソフト(マジコン)で無料で何でも(ダウンロード)できる的な。最初はゲームを普通に買ってた」
<マル調>
「これをやるようになってから買っていない?」
<中学生>
「買ってないです」
「マル調」が調べると「マジコン」は中高生を中心にかなり広がっている。
一番の被害は、任天堂のゲームソフト「ポケットモンスター」のようだ。
こうした状況を受け、任天堂などは去年、販売業者を提訴。
東京地裁は、不正競争防止法に違反するとして、「マジコン」の販売を禁止した。
しかし、この法律には罰則がないため事実上、販売を止められないのが現状だ。
では、業者はどのように「マジコン」を売っているのか?
「マル調」は雑居ビルの一室へと入った。
<販売業者>
「いらっしゃいませ。こんにちは」
<販売業者>
「なんら法に触れることはないですね」
「捕まえられないです。警察は」
「警察の人も買いに来ますよ」
「マル調」は大阪・日本橋で「マジコン」を違法に販売している店の中へと入った。
<販売業者>
「いらっしゃいませ。こんにちは」
ずらりと並べられた「マジコン」。
1個4,000円から6,000円で売られている。

この狭い雑居ビルの一室が販売店のようだ。
<販売業者>
「『マジコン』をお探しですか?」
店に入るなりすぐに話しかけてくる業者の男。
<販売業者>
「昔、一世風靡したのが『R4』というやつです」
<マル調>
「売ってることは大丈夫?」
<販売業者>
「はい、まだ問題はないです」
<マル調>
「買うこと自体は違法じゃない?」
<販売業者>
「全然、全く問題ないですよ」
<マル調>
「ダウンロードしてゲームするのは?」
<販売業者>
「まあそこらへんは本当はよろしくないんですが、あとはお客さんに任せるという形で。サイトの方も全部ご案内とかさせてもらってるんで」
<マル調>
「ネットゲームがあって、それをダウンロードして『マジコン』に入れる?」
<販売業者>
「はい、そうです」
業者は販売する際、客に違法サイトを紹介するようだが、この行為は著作権法違反になる可能性もある。
さらに男は、流暢に続けた。
<販売業者>
「捕まえられないです、警察は。日本だけでものすごい数の人が持ってるんで、日本の人口と警察の人口って警察の方が圧倒的に少ないでしょ。手が回らないんですよ」
「こちらのお客さんも使ってはりますよ」
<客の男性>
「使いまくってる。難点はゲームいっぱい落とせるからやるのが間にあわへん」
また別の路面店も・・・。
<販売業者>
「これ1台あると正規品は買えなくなりますよ」
「これ自体はまだ犯罪じゃないんです。任天堂から民事裁判を受けるんです。まだ刑事事件にはなってないんで」
<女の子>
「おいしくなーれ!萌え萌え…」
日本最大の電気街、東京・秋葉原。
ここでも「マジコン」は売られているのか・・・。
<店員>
「今はもう店が限られてるんじゃないですかね」
<マル調>
「ここでは売っていない?」
<店員>
「ここではもう絶対扱えないです。違法な商品はちょっともう扱えない傾向にありますんで」
<店員>
「当店では販売してないので、もう」
<マル調>
「昔は売ってたが今は売らない?」
<店員>
「ずいぶん昔にもうやめてしまいました」
秋葉原では、去年、「マジコン」の販売が違法と判断されてからは、ほとんどの店が販売をやめたという。
違法なゲームを起動させる「マジコン」。
これまでなぜ普通に販売され、ここまで広がってしまったのか?
<神戸大学工学研究科 森井昌克教授>
「本来はこの機械というのは、例えば自作のゲームを『ニンテンドーDS』で作りたいとか、そういう要求があるわけです。これはそういう(自作ゲームの)プログラムをSDカードに入れて『ニンテンドーDS』で動かすというのが本来の使い方です」
「マジコン」の当初の役割は自作ゲームを遊んだり、正規に購入したゲームのバックアップを取ったり、音楽を保存するための合法的なものだった。
<森井教授>
「自作のゲームを自分で作って『ニンテンドーDS』で動かしてる人はほとんどいないでしょうね。こういうことが違法だということを『マジコン』使ってる人に理解してもらうことですよね」
日本橋で「マジコン」を売る業者は、違法だと知りながら販売しているのだろうか。
<販売業者>
「これ自体はまだ犯罪じゃないんです」
「マル調」は、路面店で「マジコン」を販売していたあの男に直撃した。
<マル調>
「毎日放送です。店で『マジコン』売られてますが、違法なのはご存じですか?」
<販売業者>
「そうなんですか」
<マル調>
「どういうような認識で売られてますか?」
<販売業者>
「うちの上の人に『売れ』と言われてるんで」
<マル調>
「正規ではないものを無料でダウンロードすることは違法と知らない?」
<販売業者>
「あ〜、なるほどね」
<マル調>
「それは著作権の侵害にあたるが、それすらご存じではない?」
<販売業者>
「そうですね、知らないですね」

あくまで何も知らないと話す男。
<マル調>
「違法なものを売ってることをどう思いますか?」
<販売業者>
「ダメならやめときます」
「マル調」に対して、違法であれば売らないと話した男。
しかし、次の日―
<マル調>
「あー、きょうも営業してますね。刑事罰が適用になるまで『マジコン』を販売し続けるつもりなのでしょうか」

こうした現状を重くみた経済産業省などは、「マジコン」の対策グループを発足させ、来年度には売買に対する罰則規定を盛り込んだ法改正を打ち出す方針だ。
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