こうしたなか、米国トヨタは販売テコ入れのためにやむにやまれずか、前年と比べて販売奨励金の水準を膨らませている。調査会社のオートデータによれば、販売奨励金は乗用車で平均2602ドルと、1年前と比べて37%も高い。トラックの販売奨励金も20%上がって平均で1591ドルに達しているという。このままでは、販売奨励金を減らしているGMを上回ってしまう可能性もある。
なにより問題なのは、リコール騒動の後遺症が続いているにもかかわらず、それを払拭できるようなカンフル剤、つまり新商品が見当たらないことだ。ディーラーにおけるトヨタ車の平均在庫日数は90日分にまで膨れ上がっている。業界標準は60日分だ。トヨタのそれはかつて約30日分だった。
「トヨタの下降トレンドはわわわれにとってラッキーだ」と、GM北米部門のマーク・ルイス社長は本音を隠さずに話す。トヨタにとってタイミングが悪いのは、リコール騒動が尾をひく中で、GMやフォードが復活し、また韓国の現代自動車などの新たな強敵が頭角を現し、いずれの企業もより高い競争力を持つ製品をどんどん出してきていることだ。
むろん、同社には、潤沢なキャッシュ、そして競合他社をはるかに凌駕するR&D資産がある。その気になれば、経営資源を一気に投じて、製品開発プログラムを前倒しすることは可能だ。ただ、言い換えれば、そこまでやらなければ米国市場では持続的な回復を期待できない事態にまでトヨタは追い詰められたといえる。リコール騒動の傷跡は、かくも深いのである。