ライバルメーカーのある幹部は、「過去のリコール騒動がそうとう尾をひいている。後遺症は深刻だ」と同情を寄せる。
振り返れば、トヨタがいわゆる“意図せぬ加速”の疑惑報道を端緒とする一連のリコール騒動に見舞われてからまだ1年程度しか経っていない。その後、米道路交通安全局(NHTSA)が米航空宇宙局(NASA)にまで協力を依頼して行った調査では、電子制御の不具合は見つかっておらず、事故が起きたとされる数多のケースは、トヨタ車の欠陥ではなく、運転ミスが原因であることが濃厚となっているが、米国の消費者のあいだではこの事実はしっかりと認識されてない。むしろ年初のトヨタバッシングのせいでマイナスのイメージが消費者の脳裏に強く残ったままだ。別の競合企業の幹部は、「トヨタはフィーディングフレンジー(過剰な報道合戦)の犠牲になった」と指摘する。
ただし、報道のせいとばかりもいえない。トヨタバッシングが沈静化した後も、同社のリコール案件はかつてないペースで増えている。もちろん、あれだけのバッシングに触れた後であるから騒動の芽を事前に摘むという自己防衛本能が働いているのだろうが、それにしても過去1年間に何らかのリコールの対象になっていないモデルを見つけ出すのは難しい。合計すると、トヨタは過去12ヶ月に約100万台の車をリコールしている。その大半が米国である。
しかも、この数字は、自主的な修理・改修を含んでいない。11月30日、トヨタは、2004~2007年に製造された「プリウス」65万台について、無償での改修を行うことを明らかにした。冷却水ポンプの問題でオーバーヒートの恐れがあるためだという。トヨタ最大の競争優位であった“品質神話”は確かに揺らいでいるのである。