2010-12-09
転載「被疑者の釈放を求める意見書」
弁護人による意見書を転載します。この意見書が提出された後、「黒い彗星」氏は釈放されました。
被疑者の釈放を求める意見書
2010年12月6日
東京地方検察庁検察官 殿
被疑者 渋谷警察署1番
上記の者に対する暴行被疑事件について、下記の通り意見を述べる。
弁護人 萩 尾 健 太
[弁護人住所略]
意 見 の 趣 旨
検察官は被疑者について勾留請求をせず直ちに釈放されたい
意 見 の 理 由
被疑者は無実であり、本件逮捕は違法であって、被疑者には罪証隠滅や逃亡を疑うに足りる相当の理由も全く存在しない。
1 被疑者は無実であり相当な嫌疑はない
報道によれば、被疑者は、本年12月4日午後3時25分ごろ、東京都渋谷区神南の路上で、デモに参加していた60代の男性に飛びかかり、暴行を加えたととの被疑事実で現行犯逮捕されたと当職は聞いている。
しかし、被疑者は実際にはかかる行為はなしていない。
このデモは、右翼団体「在日特権を許さない会」(以下「在特会」という)が主催したものである。昨年12月4日に、京都朝鮮第一初級学校を襲撃し、児童たちに対して拡声器で聞くに堪えない差別・拝外主義的な罵詈雑言を浴びせ、暴行、破壊行為を繰り返すなどし、襲撃実行犯の一部は逮捕、起訴された。ところが、在特会はこれを「義挙」とし、犯罪者を「勇者」と崇めている。今回のデモは、その1周年を記念したデモである。それに対して、心ある市民が怒りと抗議の声を上げるのは当然である。
被疑者も、このデモに対して抗議の声を上げていたところ、在特会の協力団体である「主権回復をめざす会」の西村修平が、被疑者に対して、頭を下げた姿勢で突進してきた。
被疑者がそれを払ってかわしたところ、西村は転がり、それを合図に、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーが、被疑者に襲いかかり、持っていたハンドマイクで被疑者を殴る、頭髪や襟首をつかむ、蹴る、日の丸の旗竿で突く、などの暴行を加えた。
その結果、被疑者はハンドマイクで殴られた右額を切って出血し、左眉毛の上や、左目の下、唇の横などにも擦り傷や切り傷を負い、左膝にも擦り傷を負って出血した。
このように、真実は、被疑者は傷害の被害者であり、本来、捜査の対象となるべきは、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーなのである。
よって、被疑者には暴行罪はおよそ成立しない。
したがって、被疑者には「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法207条、60条)が認められない。
2 本件「現行犯逮捕」は違憲・違法である
前述の通り、被疑者は「現行犯逮捕」されたとされている。
しかし、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーが被疑者を暴行した後、警察はそれを引き離して、被疑者と15分程度、現場で雑談をしていた。その後、「保護する」と言って、手錠をかけることもなく、被疑者をパトカーに乗せ、渋谷警察署へ連れて行った。 そして、午後4時27分頃、渋谷警察署の取調室に入ったところ、その場でようやく「現行犯逮捕する」と告げたというものである。
しかし、現行犯逮捕は、言うまでもなく「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」を逮捕する場合を言うのであって(刑事訴訟法212条)、15分程度も現場で雑談をし、「保護する」(右翼団体から身を守る、という意味だと解釈される)と言ってパトカーに乗せる、というのでは、もはや「罪を行い終わった」と言える状況ですらない。「犯行との時間的・場所的接着性」をもはや欠いている。
そもそも、本来、苛烈な人権制約である逮捕は、裁判所による令状審査にかからしめ、もって適正手続を担保し、人権侵害を防止する、というのが憲法33条の趣旨である。その例外として、現行犯逮捕が認められるのは、犯行と接着しているために、濫用の危険が少なく、かつ、逃亡及び罪障隠滅の防止という目的を遂行するには令状審査を経る時間的余裕に乏しい為である。
しかし、雑談をして「保護」すると言いつつ、警察署に来てから現行犯逮捕する、というのでは、現場においては逃亡及び罪障隠滅の防止という目的が認められなかったものといえる。そうであれば令状請求の手続を得るべきであるがそれを行わなかったのは令状主義の潜脱である。また、逮捕が後で告げられなかったことにより、弁護人依頼も実質的に遅れるなど、被疑者の防御権が実際に侵害された。
よって、本件「現行犯逮捕」はその要件を満たしておらず、そのことによる弊害も重大であって、違憲・違法と言うべきである。
3 被疑者には勾留の理由がない
被疑者は、定まった住所を有している。
被疑者は無実であるから、当然隠滅すべき罪証も存在しない。
また、「証人」たる在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーらは、被疑者に威迫されるような存在ではない。
また、前述のように被疑者は無実であるから、むしろ自己の不起訴を勝ち取りたいはずである。
にもかかわらず、被疑者が上記の住居を捨て、わざわざ逃亡するというのは著しく常識に反する。
被疑者は、現在は黙秘し調書の作成を拒否しているが、そのことを理由に「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」や「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある」とするのは、憲法38条1項で保障された被疑者の黙秘権の侵害であり、およそ違法として認められない。
4 勾留の必要性は認められない
本件においては、前述のように全く勾留の理由が認められないことからすれば、仮に検察官が勾留を請求するとすれば、身柄拘束を利用して虚偽の自白を得て転向を強要するための勾留と考えられるのであり、黙秘権を保障した憲法38条2項違反であって、その点からも本件勾留の必要性(刑事訴訟法87条)は認められない。
5 結語
よって、検察官におかれては、被疑者には勾留の理由も必要性もないものと認め、勾留を請求せず、被疑者を釈放されたい。
一時も早い被疑者の身柄拘束からの解放こそ、捜査の適正を確保すべき(刑事訴訟法193条)検察官の責務である。
以上
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