今年初めに1ユーロ=130円台だった為替相場は、ギリシャ危機が囁かれ始めたことから下降の一途を辿り、いまでは110円程度になっている。アイルランドへの資金注入は、さらにユーロに対する信用不安を高めた。市場関係者のなかでは、2~3年はユーロ安が続くという見方が大勢を占めている。
では、'08年のリーマンショック以来、苦悩を続けるアメリカ経済は立ち直りつつあるのか。これについては象徴的な出来事があった。11月23日の北朝鮮による韓国への砲撃があった翌日のことである。
これまで投資家の間では、「有事の際のドル買い」が常套手段とされてきた。もっとも安定した通貨がドルだったからだ。ところが、朝鮮半島危機という有事で買われたのは、ニューヨーク市場でも東京市場でもドルではなく金だった。これは世界の市場関係者がドルよりも現物の金のほうが安定していると見ているからに他ならない。
新興国はバブル崩壊へ
先の中間選挙でオバマ民主党が惨敗したのは、10%近い失業率(今年10月で9・6%)が続き、生活が楽にならない民衆にノーを突きつけられた結果だった。アメリカ国内の悲惨な状況を東洋英和女学院大学の中岡望教授(国際経済学)が語る。
「アメリカの各州を個別に見れば、いかに深刻かがよくわかります。たとえばカリフォルニア州では、教師や消防士、警察官のリストラが続き、州立大学の予算も削られている。失業率は16~17%です。
サブプライム・ローンで家を買った人たちはローンが払えずに差し押さえが相次いでおり、差し押さえ件数は現在でも過去最高を記録し続けています。ショッピングモールなどの商業不動産も立ち退きが増えている。家主を失った空き家とテナントが出ていったショッピングモールで、ゴーストタウンになってしまったところもあるくらいです」
この状況を短期的に回避しようとしたオバマ政権は大規模な財政出動と金融緩和を実施、大量のドルが市場に溢れる結果となった。
「アメリカ、さらに欧州の極端な金融緩和政策のため、あり余ったカネがどんどん新興国に流れ込み、新興国市場がバブル化しています。先進国の景気が回復しないとこの過剰流動性は解消されませんが、バブルの芽を注意深く摘み取らないと、先進国もダメ、新興国もバブル崩壊という最悪の世界同時不況になってしまいます」(BRICs経済研究所代表・門倉貴史氏)
オバマ大統領は今年1月に「5年計画で輸出を倍増させ、雇用を確保する」と宣言したが、これは内需による景気回復が進まず、輸出頼みしか手がないことの裏返し。中国に対して、さかんに人民元の切り上げを要求するのも自国の輸出を増やしたいからだ。
世界がインフレとデフレに二分
だが中国も簡単に元を切り上げるわけにはいかない。
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