23日、北朝鮮の軍隊が突然、韓国との国同士の境にある島を大砲で攻撃しました。
韓国の軍隊も撃ち返して、撃ち合いになりました。
この撃ち合いで、韓国軍の兵隊と島で工事をしていた人、あわせて4人が亡くなり、18人がけがをしました。
北朝鮮は、なぜこの島を攻撃したのでしょう?
攻撃されたヨンピョン島は、かになどを捕る漁業が中心で、1700人あまりが住んでいます。
島からわずか13キロの所には、北朝鮮の軍隊の基地があります。
このあたりは、韓国が「自分たちの海だ」と言っています。
でも、北朝鮮も「自分たちの海だ」と言っているのです。
なぜ、こんなことになっているのでしょう?
60年前の1950年、北朝鮮と韓国は戦争を始めました。朝鮮戦争です。
激しい戦いで、数百万人もの人が亡くなったと言われています。
3年後、ようやく休戦、つまり戦争をいったん休もうということになりました。
このとき、陸地はきちんと分ける約束をしましたが、海についてはしませんでした。
このため、韓国と北朝鮮の言い分が違い、ともに自分の海だと言っている部分ができてしまったのです。
そして戦争は、実は今も休戦、つまり「休んでいる」状態です。
このため、このまわりの海では何度も韓国と北朝鮮の衝突が起きていました。
でも、陸地に向けて大砲が撃ち込まれたのは戦争を休んでから初めてのことです。
しかも、町中に弾を打ち込み、一般の人も亡くなったりけがをしたりしたため、世界で大騒ぎになりました。
実は北朝鮮は、この攻撃の前にも、とても重要な動きをしていました。
アメリカの専門家に、「ウラン濃縮施設」を見せていたことが、21日、明らかになったのです。
なぜ、それが重要かというと、原爆をつくることができるからです。
北朝鮮はこれまでも核実験を行ってきましたよね。
でも、今回の「ウラン濃縮施設」は、これまでの核兵器とは違うのです。
これまで北朝鮮がつくろうとしてきたのは、プルトニウムというものを使った原爆です。
プルトニウムは原子力発電所でウランを燃やした後にできるため、原発さえあれば、手に入ります。このプルトニウムを原爆の真ん中に入れ、まわりを爆薬で囲みます。
この爆薬を一斉に爆発させて、中心のプルトニウムをすべての方向から同じ力で押しつぶします。そうすると、プルトニウムが激しく反応して、さらに大きな爆発、核爆発を起こすのです。
でも、一斉に同じ力の爆発を起こすのはとても難しいので、北朝鮮は核実験をしています。実験は本当に成功しているかどうか、わからないという専門家もいます。
一方、原爆には、このプルトニウムを使ったものでなく、ウランを使ったものもあります。
岩などに含まれるウランのうち、燃料になるものはわずか0.7%。
原爆をつくるには、これを90%以上にまで濃縮、つまり濃くしなければなりません。それには難しい技術が必要ですが、北朝鮮は、今回、それに成功したと言っているのです。
ウランを濃縮さえすれば爆発させるのは難しいことではありません。
爆発する量のウランを2つに分けて爆弾の中に入れます。これを爆薬で1つにすると、核爆発を起こすのです。
つまり、ウラン濃縮に成功したとすれば、このウランを使った原爆をすぐにでもつくることができるのではないか、と専門家は心配しているのです。
では、北朝鮮はなぜ今、こんなことを始めたのでしょう?
1つには、北朝鮮がアメリカと直接交渉したかったからだと言われています。
世界一の超大国アメリカと対等、つまり同じ立場で交渉して、今のキム・ジョンイル総書記がトップでいることを保証してもらいたいのではないかというのです。
9月に、北朝鮮の次のトップにキム・ジョンイル総書記の息子のキム・ジョンウン氏が決まりました。
キム一家が支配する北朝鮮をそのまま残すために、こんなことをしているのではないかと言われています。
また、北朝鮮は今、多くの国民が食べるものさえなく、餓えて死ぬ人さえいる状況だそうです。
「アメリカが認めているのなら」と、他の国も北朝鮮に工場をつくったりお金やものなどを提供してくれたりするなど経済の面で有利になると思っているのではないかともみられています。
韓国と仲のいいアメリカは、28日から、この近くの海で韓国と一緒に軍隊の訓練をすることにしています。
これに対して、北朝鮮は強く反発しています。
朝鮮半島は、日本のすぐ隣。
ここで起きていることを、私たちも注意していく必要がありますね。
【 2010/11/28 放送(内容は放送時点でのものです) 】