★配信サービス乱立 本格普及へ課題
今後も国内市場への参入の波は止まりそうにない。ソフトバンクモバイルは年末に、「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」以外の端末向けの書店サービスを開始する。米グーグルも今月米国で始めた電子書籍の販売事業を、来年中に日本で展開する。
矢野経済研究所によると、電子書籍の国内市場は2010年度に前年比約1割増の670億円となり、14年度には1500億円超の規模が見込まれる。欧米で急速に普及した実績もあり、「映像や音楽などに次ぐビジネスの柱に育てる」(野口上級副社長)などと参入企業の期待は大きい。
ただ、各社の主導権争いが過熱する一方で、本格普及までには「まだ時間がかかる」(アナリスト)との指摘も根強い。
「日本市場は正直、ハードルが非常に高い」と野口上級副社長は話す。縦書きや漢字表示への対応のほか、「電子書籍展開への警戒感を持つ著者、出版社も多い」(印刷大手担当者)ことから、配信方法などで許諾交渉が難航し、「予想以上に手間がかかる」と打ち明ける。
海外では、米アマゾンが約75万点を、グーグルも約300万点を配信するのに比べると、日本勢の見劣りは否めない。
各社がこぞって立ち上げた配信サービスが、「読者視点からするとわかりにくい」(アナリスト)との声もある。どの端末やサービスでどの書籍が読めるかわかりにくいほか、紙と比べた際の価格メリットも現時点では不透明だ。
「いずれ陣営は集約される。わかりやすくしないと日本だけが取り残される」(野口上級副社長)ことは確実。本格普及へ向け、各陣営の連携や協力が求められる場面も出てきそうだ。