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漫画とアニメを名指しして、東京都が性描写の規制を強める条例の改正案を議会に出した。今年6月の議会で否決された案を手直しし、規制の対象を「法に触れる性行為や近親間の性行為[記事全文]
今年初め経営破綻(はたん)した日本航空の再建への道筋が見えてきた。ゴールに向けて順調に飛んでほしい。東京地裁が更生計画を認め、来年3月に会社更生手続きを終える。株式の再[記事全文]
漫画とアニメを名指しして、東京都が性描写の規制を強める条例の改正案を議会に出した。
今年6月の議会で否決された案を手直しし、規制の対象を「法に触れる性行為や近親間の性行為を、不当に賛美し、誇張したもの」とした。
漫画家、法律家、日本ペンクラブなどが「行政の勝手な判断で取り締まれる余地が大きく、創作を萎縮させる」と今回も強く反対している。
都条例にはすでに「性的感情を刺激し、健全な成長を妨げるおそれがある本や雑誌を青少年に売ったり見せたりしない」規定がある。知事は、出版社などに必要な処置の勧告や、「不健全図書」の指定ができる。「わいせつ物」に該当すれば刑法の取り締まり対象だ。漫画は野放しではない。
それでも不十分というのが都の言い分だ。確かに眉をひそめたくなる漫画もあるし、子供の手の届く所に置くべきでないと考える人は多い。
しかし、そのためのルール作りと運用を、行政にゆだねることの是非は、切り離して考えなければならない。
基本的人権の中でも最も重要な一つとされる「表現の自由」とかかわる規制だ。まず、当事者の自主的な取り組みを尊重するのが筋だろう。
出版社や書店などの団体は、外部の有識者を加えた委員会を設け、青少年に不適切なものにマークを付け、書店で専用棚に置いたり、袋やテープで封じたりする自主規制をしている。
多様な意見を聞き、自らをより厳しく律する努力を続けてもらいたい。7歳も17歳も「青少年」でくくる現状の矛盾の解決のために、読者の年齢を考えた表示の検討なども進めてほしい。
意見が分かれる表現があっても、青少年に届けたい漫画はある。
竹宮恵子さんは「風と木の詩」で、少年同士の性愛や父子の性関係を描いた。出版社は苦情を恐れたが、少女たちに性の問題を伝えたいと考えたからだ。文化庁長官を務めた心理学者の河合隼雄さんは「思春期の少女の内的世界を表現し切った」と絶賛。いまも広く読まれている。しかし改正案を額面通りに受け取れば、ずばり規制の対象だ。10代の読者に届かない。
過去には、医学博士である手塚治虫さんが性教育の意味を込めた漫画が「悪書」扱いされたこともある。
都は「そういう作品は規制しない」という。だが、そのさじ加減が行政の判断ひとつというのは心配だ。「描くことへの規制ではない」ともいう。しかし、産業でもある漫画は、流通にかかる圧力が表現に跳ね返りやすい。
未来の手塚さんや竹宮さんが息苦しさに悩まされず、子供たちが優れた漫画に感動したり、考えたりする道を狭めないためには、公権力を介入させることに慎重でなければならない。
今年初め経営破綻(はたん)した日本航空の再建への道筋が見えてきた。ゴールに向けて順調に飛んでほしい。
東京地裁が更生計画を認め、来年3月に会社更生手続きを終える。株式の再上場は2012年をめざすという。当初の想定より速いペースだ。
米国でも、政府支援下で再生を進めてきたゼネラル・モーターズが株式再上場を果たした。日米で再生を後押ししたのは、世界同時不況からの景気回復である。とはいえ、どちらも政府の支援が不可欠だった。
日航は企業再生支援機構から3500億円の出資を受けた。そのうえ機構のとりまとめで取引銀行に5200億円の借金棒引きをのんでもらい、約2800億円の新たな融資も受ける。ふつうの倒産企業にはありえないほどの恵まれた条件である。
日航が肝に銘ずべきは、こうした出資や融資を全額返済し、国民負担を生じないようにすることだ。世界経済はなお不安定で、経営の手腕が問われようとしている。
日航自身が長年の「親方日の丸」体質を捨て、生まれ変わらねばならないのはもちろんである。
日航は稲盛和夫会長の出身母体である京セラと、管財人となっている企業再生支援機構から計6人を役員として招き入れた。いわば再生請負人たちだ。これを機に、甘い経営風土を一気に塗り替えてもらいたい。
会社更生法の適用という荒療治は、日航が高コスト構造から転換することを可能にした。非効率なジャンボ機をすべて退役させて新型機を導入し、多くの不採算路線からも撤退する。過剰だった人員を1万6千人減らし、3万3千人体制に絞る。
当面の課題は、労使対立の克服だ。パイロットや客室乗務員で最大250人の整理解雇に踏み切る方針が対立を生んでいる。ルールを踏まえて慎重に交渉を進めなければならないが、日航は破綻企業であり公的支援も受けている。希望退職者の募集だけで削減計画数に達しなければ、一定の整理解雇に踏み切らざるをえない状況だ。
政府による異例の日航支援は航空システムを守るためである。だからこそ再生日航は国民の「空の足」を安全に支え続けなければならない。だが、期待される役割はそれだけではないだろう。国民生活や経済成長に進んで貢献する姿勢が望まれる。
たとえば政府の新成長戦略の柱のひとつ、観光戦略で日航は重要なプレーヤーだ。年間2千万人以上の海外観光客を誘致する政府目標を達成するにも、急増するアジアの中間所得層を取り込みたい。それには格安航空便がもっと必要だ。競争の激しいこの分野への参入は容易ではないが、積極的に取り組むべきではあるまいか。