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都青少年健全育成条例改正案:都が再提出 規制対象拡大、あいまい文言に懸念

 ◇性行為描写ある漫画やアニメ

 東京都が11月30日開会の定例都議会に再提出した青少年健全育成条例改正案に対し、作家らから反対の声が上がっている。漫画やアニメの性行為描写への規制があいまいなままで広がり、表現の自由を制約する懸念があるからだ。今回の改正案を検証した。【内藤陽、臺宏士】

 ◇表現の自由の制約拒み、作家ら反対 出版界「今後の自主的取り組みを尊重して」

 ●年齢規定を削除

 「今年の6月定例都議会で否決された改正案よりも規制対象が拡大している。基本的な性格は変わっていない」--。日本ペンクラブ(阿刀田高会長)が11月25日に開いた理事会では、今回の改正案への批判が相次ぎ、反対声明が採択された。

 同条例は性行為を描写した漫画やアニメについて、場合によっては18歳未満への販売を自主規制することを出版社に求め、「不健全図書」に指定したものは都自身が販売を規制できる、と定めている。

 今回の改正案では、(1)刑法など刑罰法規に抵触する性行為(2)婚姻を禁止した近親者間の性行為--などを描写した作品が自主規制の対象となる。都議会が否決した旧改正案は、対象を18歳未満にみえるキャラクター(「非実在青少年」と定義)の性行為に限定していたが、今回はこの規定を削除。対象が18歳以上のキャラクターにも広がる結果となった。

 桜井美香・都青少年課長は「都議会では『18歳未満の性行為だけを対象にするのはおかしい』という指摘があり、それに応えた」と説明する。だが、ペンクラブの吉岡忍理事は「漫画やアニメは法律に触れない性交渉だけを描け、と都は言うのか」と憤る。

 ●何が不健全図書か

 また、旧改正案は不健全図書の指定対象を「強姦(ごうかん)等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」としていたが、今回は「肯定的に」の部分を「著しく不当に賛美し、誇張するように」などと変更した。これらの文言についても、意見が分かれている。

 桜井課長は「拡大解釈されないように、わかりやすい言葉に換えて、疑念を払拭(ふっしょく)した」と説明する。しかし、青少年規制問題に詳しい河合幹雄・桐蔭横浜大教授(法社会学)は「『誇張』の意味するものが抽象的で、描写の程度の問題か分量なのかわかりにくく、あいまいだ」と指摘。さらに、修正されなかった「社会規範に反する行為」との文言についても「拡大解釈され、不倫や同性愛なども含まれる可能性がある」と語った。

 ●改善求める声受けて

 猪瀬直樹副知事は3月、条例改正に伴う規制の対象として「奥サマは小学生」(秋田書店)を例示。この漫画は小学生の性交を描いて都に目を付けられ、事実上の絶版に追い込まれた。

 日本雑誌協会は「自主規制は機能している」とするものの、児童の性描写などについて改善を求める声が今春以降、出版界に寄せられるようになった。雑誌協会など4団体でつくる出版倫理協議会は他団体とともに11月中旬、「児童と表現のあり方検討委員会」を設け、議論を重ねていくことを決めた。

 都議会民主党幹部は同月下旬、「ここまで修正した以上、賛成せざるを得ない」と言い、否決を求める大手出版社幹部に頭を下げたという。この出版社幹部は「6月に旧改正案が否決された後、性描写についてはより慎重な傾向が出てきた。出版界の今後の取り組みを尊重してほしい」と話した。

毎日新聞 2010年12月2日 東京夕刊

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