2010年12月8日5時27分
福岡県中間市で2008年9月、指定暴力団工藤会(本部・北九州市)傘下の組幹部が拳銃で射殺され、別の組幹部と組員が殺人罪などで起訴された事件で、福岡地検小倉支部が福岡地裁小倉支部に、この事件を裁判員裁判の対象から外すよう請求したことが7日分かった。地裁支部が除外の可否を判断する。
地裁支部によると、請求は11月17日付。裁判員法は、殺人など裁判員裁判の対象事件でも、裁判員やその候補者らに危害が及ぶような事態が想定される時は裁判官だけの公判に切り替えることができると定める。地検支部の古賀正二支部長は、除外を請求した理由について「コメントできない」と話している。
起訴されているのは、工藤会系の組幹部坂本敏之(42)と組員岩永哲平(32)の両被告。起訴状によると、両被告は08年9月10日未明、工藤会系の安高(あたか)毅・組幹部(当時66)宅で、安高幹部の頭や胸など4カ所を拳銃で撃ち、殺害したとされる。
事件の背景には暴力団内の抗争があると見られ、地検支部内には構成員が裁判員に圧力をかける恐れや、裁判員が恐怖を感じる可能性があるという意見があった。地検支部は昨年10月の起訴以来、裁判員裁判からの除外を検討し続け、福岡高検など上級庁とも協議のうえ、最終的に請求に踏み切ったとみられる。
一方、裁判員裁判は市民感覚を裁判に反映させるために導入された。対象事件を除外することは「制度の趣旨に反する」と指摘する法曹関係者もいる。今月6日の公判前整理手続きでは、除外の可否についての判断は示されず、公判日程を来年1月26日〜2月7日のうちの7日間と決めた。
最高裁によると、裁判員裁判からの除外が請求された例はこれまで1件が確認されているが、実際に除外に至ったケースはいまだ確認されていないという。(伊藤宏樹)