近年、日本企業の海外への積極的な進出がみられるが、これは将来の日本の人口問題を見越したうえでのものだと真壁教授は指摘する。内閣府は毎年、製造業の海外生産比率を調査しているが、そこにもこの流れがはっきりと表れている。'90年度の海外生産比率が6.4%だったのに対し、20年後の'09年度には過去最高の17.8%を記録しているのだ。
「このままでは、やがて日本国内には地元密着型のスーパーとか、海外に進出するだけの体力がない企業・金融機関しか、残らなくなる恐れがあります。人口減少に歯止めがかからなければ、日本そのものが経済規模の小さい『貧乏な国』になってしまうでしょう」(前出・真壁氏)
『The Economist』誌をはじめ、世界が日本の将来に注目し始めた理由が見えてきただろうか。一時は世界経済のトップを走っていた国が、いま静かに、そして着実に「死」を迎えようとしているのだ。興味が湧かないワケがない。また世界的にみても、先進国では人口減少・高齢化が進んでおり、日本は自国の将来を考える上で「いいモデルケース」となっているのだろう。
特に、眼を見開いて日本の人口問題に注目しているのが、近い将来、同じ問題を抱えることになる中国と韓国だ。
日本がどうなるかを見てから
9月10日、中国社会科学院財政貿易経済研究所は「中国の高齢化はこれから進行し、2030年には日本を抜き、世界一の高齢国家になる」と指摘した。国連の人口統計によると、中国では2040年には全人口の28%が65歳以上に達し、経済は一気に減速、社会保障問題で国家は大変な混乱に襲われることになるのだ。
また、韓国は日本と同じく出生率の低下に苦しんでおり、2050年には韓国の人口は4234万人と現在より13%も減少すると予測されている。
「韓国では、医療費の増加水準がOECD加盟国平均の約3.5倍と圧倒的に高く、今後わが国の社会保障政策が行き詰まることになるのは間違いない」(オ・ヨンス・韓国保健社会研究院政策研究室長)
それでも、韓国は日本ほどに人口減少・高齢社会に悲観的ではない。
「韓国が本格的な人口減少に直面するのは、10年ほど先の話でまだ余裕がある。日本の対策を参考にすることもできる」と語るのは、チョン・ホソン・サムスン経済研究所首席研究員だ。
「韓国は外国人移民の受け入れに比較的寛容であり、さらに中国をはじめとした外国人投資の誘致が進んでいるため、人口減少による経済的なマイナスはある程度カバーできる。韓国はグローバルな視点から、この問題の解決策を見出そうとしている。反面、日本は10年ほど前から政治的な混乱が続いており、ほとんど対策が進んでいないのではないか」
情けない話だが、確かに日本の対策は、ほとんど進んでいないに等しい。
人口問題に詳しい識者に、人口減少・高齢社会を乗り切るための方策について意見を求めた。東京財団の石川和男・上席研究員は、日本の活路について、こう話す。
「日本の高齢者の保有している資産は、数百兆円にのぼる。この資産を消費に回すことができれば、内需で日本経済を活性化させることができる。高齢者向けのビジネスはいくつも考えられるが、介護や医療といった、社会保障産業に注目したい。これを巨大な産業に成長させられれば、それは原発や水道のように、『JAPANESE KAIGO』として、そのシステムやノウハウを海外に輸出し、外需をも呼び込むことにつながります」
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