これは革命だ!
「人口減少社会」あなたが知らないニッポンの真実

2010年12月08日(水) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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「水道からは濁った水が流れはじめ、最悪の場合、水道水が利用できなくなる自治体が出現する可能性もある」と前出の局員は指摘する。

 市民の足である鉄道も、人口減少の影響をもろに受ける。「人口が減れば、満員電車がなくなるからいい」といったノンキな発想は、もう止めたほうがいい。人口減少社会においては、電車そのものがなくなってしまうかもしれないのだ。

 今年度、関西・中国・四国の鉄道会社が相次いで赤字報告を出し、鉄道関係者に衝撃を与えた。JRをのぞく中国地方の鉄道会社の'10年3月期決算報告では、10社中9社で輸送人員が前年度を下回り、7社が減収(うち4社が赤字)。さらに、関西私鉄大手の同期決算では、3社が減収減益を発表。来年3月期も運輸収入は減少の見込みだという。

「新型インフルエンザの流行や景気低迷も大きな原因ですが、人口減少という構造的な問題が影響しています。まず、通学で電車を利用する学生が減り、定期券収入が落ち込んだ。さらに、高齢者が増えるほど、移動圏が狭くなり、電車を利用しなくなる。駅員の数を減らしたり、特急の数を減らしたりと対策を講じなければなりませんが、利便性の低下は避けられないでしょう」(関西の主要電鉄会社職員)

 私鉄だけの問題ではない。JR四国では、'09年度鉄道輸送収入が前年比約10%減の360億円と、過去最大の下落率を記録した。焦りを感じた四国の鉄道関係者らは、問題を協議する懇談会を発足させたが、その初の会合では、減収の主な原因として、やはり「人口減少や高齢化が進んでいること」が挙げられた。

 また、関西の私鉄の雄である近鉄では、特急・快速本数の見直しや、無人駅の拡大などを検討中だ。沿線距離では日本一を誇る近鉄だが、利用客が少なく経営を圧迫する閑散線区が7割に達しているためである。

高齢者が増えても病院はない

 鉄道業界では、とくに「通学者の数が減る」ことを問題視しているが、言うまでもなく、近い将来子ども(0~14歳)の数は激減する。先ほど、2055年には高齢者が人口の40・5%を占めるという数字を紹介したが、同じ時点での子どもの比率は、わずか8%である。

 子どもの数が減れば、公立の小中学校の統廃合も必然的に進む。この5年で全国で約1000の小学校が閉校した。市町村合併の影響もあるが、統廃合の主な要因が少子化であることは間違いない。

「学校のなかには、すでに『学級』として機能していないところもあります。在校生が40人未満で、『学校で球技ができない状態』の小学校もいたるところにあると聞いています。人口の少ない自治体では、学校がコミュニティ機能の維持に大きな役割を担ってきました。その学校がなくなると、町の活気が失われ、自治体の衰退に拍車がかかることになるのです」(文科省関係者)

 人口減少が深刻な青森県では、'08年に青森市が統廃合により市内の公立小中学校を4割減らす計画を立てた。計画は住民の反対により撤回されたが、ここ数年、青森県では0~14歳の人口が、毎年約5000人ずつ減り続けている。青森県の'05年の0~14歳人口は約20万人であるから、毎年5000人ずつ減っていけば、約40年後には青森県から子どもがいなくなる計算だ。

 青森県だけでない。同様の事態は他県でも進行しており、秋田県、長崎県などでも、子どもがいなくなる可能性が高まっている。子どもを通わせる学校がないどころか、子どもそのものが、市町村から姿を消してしまうかもしれない。

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