これは革命だ!
「人口減少社会」あなたが知らないニッポンの真実

2010年12月08日(水) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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「この推計によるなら、2055年には国民の40・5%が高齢者になります。これは人口減少以上に深刻な問題です。生産年齢人口が減って、高齢者が激増するということは、現役世代が負担する社会保障費も大幅に増やさざるをえなくなるということであり、現在の福祉制度は成り立たなくなります」

 人口問題研究所によると、25年後、日本の4割以上の市町村で、高齢者の割合が4割を超えるという。すれ違う人の二人に一人は高齢者で、幼い子どもが歩いているのを見たら、「今日、子どもを見たよ」と話題になる。そんな町があちこちに出現するのだ。

 人口減少と高齢化---この二大危機に、同時に襲われるニッポン。近未来のこの国の姿は、いったいどんなものになるのだろうか。もう「気づかないフリ」は許されない。

水道水の需要が半減する

 近年、自治体の首長選挙では「人口減少をどう食い止めるか」が大きな争点になり始めている。去る11月21日に投開票が行われた尼崎市長選(兵庫)、室戸市長選(高知)、長井市長選(山形)。立候補者は、いずれも「人口減少対策」を公約の柱の一つに掲げて戦った。富山県小矢部市は、テレビで市への転入を促すCMを放映するなど、市町村レベルでは、人口減少は「いま、そこにある危機」として迫っている。

 程度の差こそあれ、人口減少は、ほぼ例外なくすべての自治体を襲う。そうなったとき、われわれの生活はどうなるのか。ある研究者は「日本中で長崎県の離島のような自治体が発生する」という。

 長崎県の島々からなる、五島市・新上五島町・壱岐市・対馬市の3市1町では、この10年間で約15%、2万3000人の島民が姿を消した。これによって、長崎県・上五島では、島と本土を結ぶ上五島空港の定期便が'06年に廃止された。人口約3000人の奈留島では、来年3月に、島内に唯一あった地銀支店の閉鎖が決まっている。

 生活に欠かすことのできない交通手段や金融機関が、人口減少によって次々と消滅していく。これが、近未来の自治体の姿なのである。銀行も、交通手段もない町---たとえば、普段何の気なしに使っているインフラも、「当たり前」のものではなくなっているかもしれない。水道もそのひとつだ。

 いま、水道業界では「2040年問題」が首をもたげている。現行の水道事業が、人口減少のせいで維持できなくなる可能性があるというのだ。東京都の水道局員が説明する。

「水道配水管は40年が法定耐用年数で、それ以上使用するときには、漏水や濁水を防ぐための補修作業をしなければなりません。

 この補修も含めて、水道事業には莫大な予算がかかります。その費用は水道料金で賄ってきたのですが、全国で年々水の需要が減っており、人口減少が進んだ2040年には、需要が現在の約半分ほどになると予測されている。そうなると、水道事業収入も、現在の半分ほどになってしまいます。配水管の法定耐用年数がくれば補修をしなければならないのですが、その費用が捻出できなくなる恐れが大きいのです」

 実例を示そう。昨年4月、静岡県熱海市は、漏水事故を防ぐための維持費が捻出できなくなるとして、水道料金を9%値上げした。高齢世帯には、この数字が重くのしかかってきている。さらに人口が減って自治体の水道事業収入が減少すれば、値上げでも対応できなくなる日が来る。

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