2010年12月8日
兵庫県養父(やぶ)市の公立八鹿(ようか)病院の医師だった男性(当時34)が自殺したのは、長時間労働と上司のいじめが原因だとして、鳥取県内の遺族が8日、同病院を運営する病院組合と当時の上司2人を相手取り、慰謝料など約1億5千万円の損害賠償を求める訴訟を鳥取地裁米子支部に起こした。原告側の弁護士によると、医療現場の過労自殺をめぐって、上司の責任を問う訴訟は初めてという。
訴状によると、男性は2007年10月から八鹿病院に勤めたが、同12月、住んでいた官舎で自殺した。
遺族側は、男性が週60時間近い時間外労働を強いられていたと主張。さらに患者の前で上司から怒鳴られたり、頭をたたかれる暴力を受けたりしていたと指摘し、「指導を逸脱した叱責(しっせき)や人格をないがしろにしたいじめがあった」と訴えている。
男性の自殺については第三者による調査委員会が08年に報告書をまとめ、「(上司の)不適切な指導や対応が日常化し、本件発生の大きな原因になったと認めざるを得ない」と結論づけている。地方公務員災害補償基金兵庫県支部も今年8月、過重労働による公務上の労災と認めた。
男性の母親(64)は記者会見し、「若い医師が置かれている環境が変わり、再発防止の一助になって欲しい」と話した。病院側は「訴状を見た上で今後の対応を検討したい」とコメントした。