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【社説】

週のはじめに考える すさむ世情と政治空白

2008年11月23日

 お尋ねします、麻生首相に。世の中ひどくすさんでいませんか。なのに政治はなすすべなく漂っていると思いませんか。流れを変える余力はお持ちか。

 ひどい事件が続きます。近くは元厚生次官宅の襲撃。犯行の動機もいまだ不明なのが不安をあおります。民主社会を脅かす卑劣な行為には、ひるまず、みんなで立ち向かわなくてはいけません。

 国民の安全と安心を何をおいても全力で守るのは、政権を担当する最高責任者の務めでありましょう。ここぞの場面でしたのに、先頭に立つべき首相のコメントには強い憤りが感じられない、と野党などから批判がでていました。

政権二カ月、滑る言葉

 あろうことか、自民党の厚相経験者からは、この凶行を招いたのは年金行政の失態を追及する野党やマスコミだ、との発言が。お門違いもいいところです。

 首相はこれを「言論の自由は誰にもある」と黙認しますか。党首として〓責(しっせき)すべきでしょう。言葉が乱れ、それが、すさむ世相に拍車をかけていませんか。航空自衛隊トップが文民統制そっちのけの危ない言動を繰り返したのも、ついこの間のことでありました。

 麻生政権が発足して二カ月になります。首相就任時の私どもの社説は首相の口から発せられる「言葉の質」に注意を喚起しています。まさかこのわずかな期間に懸念が現実になるとは、正直いって思いもしませんでした。

 お医者さんには社会的常識の欠如している人が多いとか、後で謝罪と撤回を迫られるような放言をしたり、二兆円もの巨費を投じる定額給付金をめぐって、やっかいなことは自治体で、それが地方分権でしょ、と言ったり…。

 バー通いや漢字の“読み違い”で自国の首相を自虐的に笑う風潮と私たちは一線を画します。が、この乱れようは看過できません。

解散逃げた大きなツケ

 いかにも「思いつき」みたいな言葉が滑って新たな騒動を引き起こし、そのこと自体、統治権力の「空白」を内外に印象づけます。

 来年度予算の編成で焦点の一つになる道路特定財源の使途。首相は一兆円を地方の自由になる交付税にしたいらしいのですが、それを口にしたとたん、道路にカネが回らない、と反発する自民の族議員から「首相発言は黙殺だ」の声が公然と噴き出しました。

 首相が日本郵政グループ株式の売却を「凍結した方がいい」と語れば、自民の郵政民営化勢力からすぐさま「発言訂正の要求」が飛び出します。

 どの言い分に理があるかはさておき、首相の威信が陰っているというか、重みがない。与党が首相を侮る。異様で深刻な事態です。

 なぜこうなったかを考えましょう。そもそもこの政権は、迫る総選挙の顔に麻生さんをと、自民、公明の与党が選択しての発足でした。首相がその気だったのは月刊誌に寄せた手記で明らかですし、与党幹部も認めています。

 でも世論の支持が芳しくなく、取り巻き連中は選挙先送り論。米国発の金融危機もあって衆院解散をためらい、首相は「選挙勝利が天命」の前言を翻したのでした。その大きなツケが回った、としか言いようがありません。

 すぐに選挙、のはずでしたから例えば定額給付金など性格も内容もずさんで迷走します。“緊急”経済対策で景気後退に備えると首相が記者会見までした補正予算案は、今の国会でなく年明けの次の国会で処理だと政府・与党幹部が言っています。選挙向けだったのをまるで自白しているみたいに。

 それで今の国会はどうするか。会期通りに今月末で閉じるのかというと、インド洋の給油継続法案や金融機能強化の法案が野党の抵抗で未成立のまま参院に残っているので、衆院再可決の要件を満たすまで延長らしい。

 延長国会で与党は恐らく何もしない。審議の場は迷走を野党に攻められるだけだし、来年度予算編成作業の妨げになるから。政権は保身へ傾いているのです。

 とはいえ今のご時世、予算づくりは難しい。年金や医療、社会保障のお金が足りない。借金漬け財政も限界。増税に頼るにせよ、前提になる経済の改善が一体いつになるか、見当もつきません。

 国民の信任を背にする本格政権でないと難題に取り組む資格すら疑わしい。私たちが総選挙を求めてきた理由は、これなのです。

要注意の投げやり空気

 政治の空白を心配します。このままでは政治は何も決められそうにない。ならば自分たちの一票で決めさせろと、心ある有権者が言っているのが聞こえませんか。

 人々がよりどころを失えば投げやり気分が広がって世情も一層すさみます。その先に暗い時代がくるのは嫌だから、首相に求めます。初心に戻って出直しを、と。

 

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