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【社説】

2兆円減税 なりふり構わずですか

2008年10月22日

 与党は追加経済対策に二兆円の定額減税を盛り込むらしい。庶民感情からすれば「助かる話」ではあるけれど、経済効果には疑問符も付く。選挙目当ての大盤振る舞いとすれば、その効果は怪しい。

 実現すれば十年ぶりである。金融危機に伴う景気対策として橋本内閣が一九九八年、計四兆円の定額減税を実施している。

 金融危機が実体経済に悪影響を与えつつある状況は当時と似ている。十月の月例経済報告の景気判断は「弱まっている」と下方修正、景気後退が加速し始めている。

 そんな中で政府・与党が近々決定する「生活対策」の目玉に位置付けるのが定額減税だ。

 二〇〇八年度中に所得税と個人住民税を合わせて二兆円規模の定額減税を実施すれば、四人家族の世帯で六万五千円程度の減税になるという。

 定率減税と違って、定額減税は低所得者層ほど恩恵が大きいとされる。減税分のお金で家計を潤すことで「消費の下支えと生活防衛」を図る狙いがある。課税されていない低所得者層には別途支給する方針だ。

 ただ疑問点も少なくない。

 減税は一回限りで、はたして経済効果をもたらすか異論もある。財源は財政投融資特別会計の積立金から充てる案が検討されているが、結果的には赤字国債増発と同じになるとの指摘もある。

 将来世代に借金を残すことになるし、いずれ消費税増税へ跳ね返ってくることにもなるかもしれない点は留意する必要がある。

 自民党は当初、財政規律派を中心に公明党が求める定額減税には慎重姿勢だった。それが一転、受け入れに回ったのはなぜか。整合性のある説明を求めたい。

 「十一月総選挙」の場合、与党は自公政権が維持できれば定額減税が実施できる、選挙に負ければなしだと、宣伝することになるだろう。選挙戦のカードなのだ。

 与党内からは、バラマキと批判されようが選挙勝利へなりふり構っていられない、との声も漏れる。しかし、政権死守への執念がそのまま得票に結び付くとは限らない。

 麻生太郎首相が「生活対策」を唱えるのは分かる。その一方で就任以降、ホテルのレストランやバーなどでの「夜日程」をこなしてもいる。おそらく「六万五千円」どころではないお金がかかっているのではないか。首相の言動と庶民感情とのずれが気になる。

 

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