ホテルのバーは安いか高いか。幸か不幸か、そこで一杯、の経験が乏しいので議論に参加しにくいが、たぶん、答えは簡単だ。
「幸いにして自分でおカネがありますから」とおっしゃる麻生太郎さんのようなおカネ持ちには安くて、たとえば経費の節減でぎゅうぎゅう絞られている世のサラリーマンたちにしてみれば、とっても高い。
つまり、生まれや立場で感覚も大きく異なる。古今東西変わらぬ「格差」の一つといっていいのだろう。
「安全で安い所だ」と夜な夜な有名ホテルのバーなどに通う首相を、だからどうだ、こうだ、と責めるつもりもないけれど、やっぱりここは人の感情を軽く見ない方がいい。「普通にどなたでも来ている」所ではけっしてないのだから。
麻生さんのかつての著書「祖父・吉田茂の流儀」にこんなくだりを見つけた。「借金はできるだけしないにこしたことはないが、どうせするなら思い切って大きく借り、仕事は大きなものに取り組む気構えでやりたいものだ」「仕事は中途半端では飛躍は望めない。使うべきと見極めたときには大きな融資も受け、思い切って使うものだ」
で、ご存じかどうか、品川駅前の老舗ホテル。リーマンなんとかの破綻(はたん)のあおりで解雇通知された従業員たちが、飲食店も含めて自主営業中とか。足を運んで労使まとめてご指南されてはいかがか。バランタインでも注文して。(谷政幸)
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