2010年10月9日 20時48分 更新:10月9日 23時23分
【コピアポ(チリ北部)國枝すみれ】チリ北部のサンホセ鉱山の落盤事故で、地下に閉じ込められている作業員33人を救出するためのトンネルが9日午前8時(日本時間同日午後9時)過ぎ、地下約620メートルの坑道まで貫通した。チリ政府はカメラをトンネルに通し地質を調べ、内壁を補強した後、12日から救出作業を始める予定で、現地に詰め掛けた家族らの期待は高まるばかりだ。
貫通したのは3本掘っていたうち、井戸掘り用の高速掘削機を使用した2本目のトンネル「プランB」。「フェニックス(不死鳥)」と名付けた救出用カプセルを使い、作業員を1人ずつ地上に引き上げることになる。
マニャリク保健相は毎日新聞に「33人の精神状態はとても良い。だが健康状態に関し、10人が重い皮膚病を患うほか、糖尿病、高血圧、慢性的な呼吸器疾患を持つ者もいる」と話した。
鉄製の救出用カプセルの内部は、高さ1.9メートルで直径53センチ。大人1人が直立できるほどの広さだ。空気タンク三つがついており、救出中の作業員の呼吸を助ける。
保健相は「最も健康で経験豊富な作業員に最初に乗ってもらう。途中で止まるなど問題が起きた場合、カプセルの底を開けて自力で下に下りなくてはいけないからだ。最後に脱出する者も同様に健康で精神的に強くなくてはいけない」と話した。海軍の医務官が地下に下りて救助を手伝う。
救出された作業員は家族1人と5分間だけ面談できる。その後は1人約2時間をかけて、血圧、視覚、聴覚、心肺機能、精神状態などをチェック。鉱山の仮設診療所には八つのベッドと家族の待合室もあり、状態が良ければ家族との面会時間を増やす方針だ。また、ヘリコプターを待機させ、コピアポ市内の病院への搬送準備を整える。
サンホセ鉱山では貫通と同時にサイレンと鐘が鳴り、徹夜で待っていた家族が喜んだ。作業員マリオ・ゴメスさんの妻は「奇跡です。とても幸せ。もうすぐ出てくると思うと待ちきれない。作業員はチリの誇りです」。
2人の息子が地下にいるアルフォンソ・アバロスさんは、ぼろぼろとうれし涙を流しながら「男は泣かないものだが、この時ばかりは泣くべき時だ。本当に長い間待っていたんだから」と話した。